「韓国」全羅線のO-SU駅にイソウロウ



韓国最後の非自動幹線。その末期の姿にイソウロウする。

↑立ち並ぶ腕木信号機の中を走る無窮花号。2004年4月、高速鉄道KTXの開通で新時代を迎えた一方でこの様な昔ながらの風景が過去のものになります…
 

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私も愛読しています。是非併せてご参照下さい

無等鐵道
O-SU駅を始め全羅線の非自動の新線化後の姿を繊細に記録しています
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O-SU駅や慶全線など韓国の非自動路線の訪問旅行記が印象的です
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韓国版ハチ公の故郷、全羅線O-SU駅

韓国南西部の全羅道を縦断する全羅線。ビビンバで有名な全州や「春香伝」の南原、多島海の入口、麗水を目指す路線です。O-SU駅は南原から北に20Km、のどかな農村に位置します。O-SUとは漢字で[傲犬]樹、「大きな犬の木」と言う意味です。自らを犠牲にして主人を火事から守ったという韓国の忠犬伝説のある村O-SU、今回はここO-SU駅の通票閉塞末期の姿にイソウロウします。
 

駅の待合室

 

駅の待合室の風景。日本のローカル駅にも似た風景は懐かしさ満点です。


ここO-SU駅では一日上下30本の旅客列車が発着し、ソウル、全州、南原と近郊輸送から長距離まで幅広い利用者があります。
 

花の多いホーム
 



韓国の駅では軒並み見られる風景ですが、駅には多数の花が植えられ、訪問者の心を和ませてくれます。ここO-SU駅も花壇に色とりどりの花が咲き誇っていました。

ホームの風景

 

いかにも大陸的な低めのホームの真ん中には腕木式信号機を操るレバーが並んでいます。

事務室にイソウロウ

 

駅長さんに挨拶しに事務所へ。6月と言うのに炎天下の外とは違い、冷房の効いた心地よい空間です。



最後の活躍をする閉塞機

 



事務所の中には非自動の証、2つの閉塞機がありました。日本時代に開通して半世紀以上、ここ全羅線では人の手で列車を動かし続けています。閉塞機は左が五柳駅とのもの、右が書道駅とのものです。

 

※参照ページ
全羅線書道駅にイソウロウ
 

事務所の風景@

 

列車が来ない間は非常にのどかな風景が繰り広げられます。

事務所の風景A

 

骨董モノの黒電話から最新のネットワークKROISまで、新旧のテクノロジーが共栄共存しています。

(右上) 機関車との通信用の無線機。

(左上) 無災害日数の記録版。只今278日、記録更新中です。
 

閉塞開始!



下り貨物列車の通過時刻が迫り、書道駅との閉塞を開けます。電話連絡でタブレットを発行し、ホームの授器にセットします。

信号操作

 

閉塞手続が完了すると列車が駅を通過できる状態。ホームのレバーを操作して信号機を操作します。10本のレバーの組み合わせで、列車を所定の線路に通過/停車させます。

レバーには赤と緑の印が付いていますが、赤は駅の北側に有る信号機、緑は駅の南側にある信号機を意味します。その為、赤いレバーを操作する時は駅員さんは上り方面(北側)を見ながら、緑のレバーを操作する時は下り(南側)を見ています。


 

列車がやって来た!

 




遠くに汽笛が聞こえると、貨物列車がやって来ました。全羅線の終点付近は鉄鋼や化学を中心とする工業地帯で多くの貨物列車が往来します。
 

 

程なく轟音と共に貨物列車は通過。全羅線では珍しい女性機関士さんが走る機関車のステップで待ち構え、通票を取って行きました。速度は40〜50Km/h、取り損ねれば列車は緊急停止というプレッシャーの中での職人のなせる業です。

ちなみに機関士さんが手にしている通票を取る器具は「トンピョゴリ(通票掛け)」と呼ばれます

駅前探索の時間〜

 

通過列車を見送った後は駅の周辺を散策します。炎天下の中、駅前はいたって静か、平和な一日がここにはあります。

O-SU駅前

 


O-SUの駅前の様子。今も韓国式の瓦屋根が並ぶ風景は映画の舞台にもなりそうな古き良き風情が漂っています。

 

貨物ホーム

 




日本時代から使われている貨物ホーム。まだまだ現役で、今も穀物の積み込みが行われています。往年の日本のローカル駅を思わせる、鉄道ファンにはたまらない空間です。(*^^*)

非自動なオブジェたち

 



駅から水田のあぜ道を少し歩くと手動式のポイントや腕木信号機があります。

ポイントも信号機も手動。非自動感満点の風景です。
 

無窮花号通過

 



暫くすると近くの踏切が鳴り出し、麗水行きの無窮花号がO-SU駅に到着します。

新しいCI塗色の機関車に、開通当初から受け継がれる腕木式信号機が顔を合わせます。

 

駅裏探索

 

O-SU駅前は古い町並みが建ち並ぶのに対し、駅裏は水田を中心とした山べりの農村です。田植えが一段落しつつある青い水田の農村に赤や黄色の腕木が良いアクセントです。
 

農村O-SUの風景

 


どこと無く懐かしい感じのする踏切を渡り、農家の軒先を歩きます。農家では農作物や肉牛の他に珍島犬の飼育を行っていました(←この犬達は食用では無いとの事ですのでご安心を^^;)



見慣れぬ日本からの訪問者(?)に静かな農家がワンワン、モーモーとにわかに活気付きます。

 


駅に戻っておやつおやつ〜♪

 

駅周辺の散策から戻ると、おやつが待っていました☆

(左上) ほのかに甘みの付いた蒸しパンのような生地にグリンピースの入ったおやつ。冷たいお茶と共に頂くと止められない味です。


(右上) たいやきを模したアイスクリーム。韓国にたいやきがあるのは知られていますが、それを模したモナカアイスまであるのにはビックリでした!韓国版アイスにはお餅の様なものが入っていて、日本のものとはまた違った食感が楽しめます。

(右下) 駅の業務用PCでインターネット。ん?んん!?(*^^;
 

駅の本業〜乗車券販売業務

 

おやつ片手に駅事務室内の切符販売ブースを見学します。今年の春頃から韓国国鉄では新しい電算システムによる乗車券の販売を行っており、O-SU駅にもこのシステムが入っていました。

駅員さんも慣れた手つきで迅速的確に切符を出して行きます。

無窮花号を迎える

 

おやつをご馳走になった後は駅員さんも仕事モード。上下の無窮花号の列車交換と有って、駅員さん総出で閉塞扱い、信号扱いとこなして行きます。

改札開始

 

発車5分ほど前に改札を開始します。



(右上) 改札開始の案内放送は駅のパソコンから音声ファイルを手動で流しています。

上り無窮花号が到着

 

乗客が改札を終えて、暫くすると上りの益山行き無窮花号が入線してきました。

下りも到着

 

その1分ほど後に下りの麗水行きが到着しました。

(右上:3番) 下りの機関士さんが上り機関車前にタブレットを投げます。(腕木信号機付近で輪っかが宙に浮いているのが見えます)駅員さんがそれを拾い上りの機関士さんに渡します(左下:7番)

乗客を乗せ終えると列車はそれぞれの目的地へと旅立って行きました…

列車発車後

 



列車を見送った後は信号を停止現示に戻し。次の列車の閉塞扱いをします。



夏の小駅

 

今日の全羅道は気温がぐんぐん上昇、30度を超えて真夏の様相です。

 

駅員さんの仕事風景@

 



快晴で日差しの強い暑さの中でも駅員さんは確実正確に業務をこなして行きます。

駅員さんの仕事風景A





午後のO-SU駅は旅客列車、貨物列車と10〜20分おきに列車がやって来ます。単線非自動ながらその列車密度とCTC顔負けの正確な運用には目を見張るものがあります。

駅員さんの仕事風景B






貨物列車の多い全羅線は急なダイヤの変更が日常茶飯事です。駅員さんは慣れた様子で列車を捌いてゆきますが、簡単に見えてとても大変な業務です。


(左下) 製鉄所からのコイル状に巻かれた鋼板は日本の貨物列車では見掛けない積荷形態です。



色とりどりの花に見送られ、列車はソウル(龍山)を目指します。

駅員さんの仕事風景C





日も傾き、若干日差しが弱まり始めました。それでもまだまだ暑い炎天下、非自動全羅線最後の夏は暑い夏となりました。

そして、夕暮れ



多くの列車を見送って、あっという間に夕暮れの時を迎えました。遠くの山並みが何とも郷愁を誘う風景です。

夕暮れのO-SU駅

大分涼しくなった夕暮れ。都心へ帰る人、都心から帰って来た人と、様々な利用者の姿があります。

賄いの時間〜☆

 

列車の合間を縫って皆で賄い(夕食)を摂ります。今日のメニューは地元の野菜で作ったおかずと、韓国風のラーメンライスです。外部の取材者をこうして食事で親切にもてなして下さる駅の方々には感謝で本当に胸が一杯です。


暑い日だからこそ、熱く激辛のラーメンは心地良い味わいでした〜(^_^"

日も暮れて

 

夕食をご馳走になる頃には、すっかり日も暮れました。次の列車はソウル行きの最終セマウル号。我々もこれに乗ってソウルへ帰ります。

セマウル号到着準備

閉塞扱い、信号扱い、改札を行いながら、最終の上りセマウル号到着を待ちます。

セマウル1086列車到着

遠くに機関車のライトが見え、そのままセマウル号はホームに滑り込みました。お世話になった親切な駅員さんとはこれでお別れ。「次回は新しいO-SU駅で会いましょう〜」

半世紀以上の歴史を誇るこの古いO-SU駅、腕木信号機、通票授受、人間味溢れる全羅線の鉄道風景に別れを告げる時がやって来ました。

O-SU駅を後にする


セマウル号の後方デッキから。別れを惜しみ駅員さんは静かに動き出したセマウル号をいつまでも見送って下さいました。非自動区間の魅力、そして非自動な鉄道趣味の原点はこうした人と人との触れ合いと言うことを実感しながら、駅員さんの姿が見えなくなるまで手を振り替えしながら、O-SU駅を後にした…

イソウロウ日時
2004年6月

 



新しいO-SU駅
 

全羅線O-SU駅は2004年7月17日を以って、直線高架の新線に路線切替が完了。これに伴いO-SU駅は500M程離れた新駅に移転、自動化により通票閉塞も終了しました。
 

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