「韓国」全羅線の無窮花号にイソウロウ後編 〜非自動劇場、運転室から〜
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↑「三角」の点呼を済ませ、無窮花号は任実駅を出発します。
おすすめサイト(日本語)私も愛読しています。是非併せてご参照下さい無等鐵道全羅線の非自動の姿と新線化後の姿を繊細に記録していますT.Shibata's Home Page全羅線や慶全線など韓国の非自動路線の訪問旅行記が印象的です
全羅道を南北に縦断する全羅線。全長194Kmの路線を走破する無窮花号#1525列車は始発駅益山を出発して任実駅に到着、新線工事の進む中、ここからは終焉近い非自動の旧線を走ります。
任実駅を出発した列車は、程なく右手に新線を見送り、昔ながらの旧線へと足を踏み入れます。
木製枕木に乗った線路が山間をくねくね曲がりながら行く旧線。ジョイント音も軽やかに極上のローカル線風景が続きます。
山間を60〜70Km/hの速度で走り抜けます。懐かしく、心地良く、五感に訴える線路が続きます。
新CI機関車からの後方風景。4両+電源車の短編成がローカルムードを盛り上げます。
前方に腕木信号機が見えたら、五柳駅です。列車は通過扱いですが、セマウル号との交換がある為、運転停車します。田園に立つ五柳駅の腕木式信号機も大変美しいです。
五柳駅は副線に停車。任実からの通票は機関士さんがブレーキ操作をしながら授けます。通票を片手に慎重にブレーキを掛けます。
列車は五柳駅に到着。対向列車の上りセマウル号の定時通過の為、通票は受け器に投入せず、一番授け器に近い場所に投げ落とします。
列車が停車した10数秒後、遠くにセマウル号の姿が見えました。通票閉塞なのにATS張りの正確なダイヤに驚きを隠せません。
セマウル号が通過。すぐに駅員さんから次のO-SU駅までの通票が手渡され、出発進行〜!この辺りの速さもオドロキです。O-SUまでの通票種別は○です。機関士席後方のフックに通票を掛けます。
最後の活躍をする五柳駅、そして美しい腕木信号機の脇をすり抜け、列車は出発します。
(左上) 列車は五柳を出発してしばらく行くと高架の新線をくぐります。もうすぐこの新線が開通し、半世紀以上使われたここ旧線はその役割を終えます。(右下) 鳳泉駅。ぱっと見たら見落としてしまいそうな小さな無人駅です。#1525列車は残念ながら通過します。
機関士さんは次の駅、O-SU駅と連絡を交わします。定刻通りに次のO-SU駅では上り貨物列車との交換を行います。
短い鉄橋を渡ると人家が増えてきました。O-SUの街はすぐそこです!
O-SU接近
左カーブを曲がるとそこにはO-SU駅と対向の貨物列車が待っていました。
腕木信号機が見えたら、副機関士さんが突然席を立ち、まだ走行中なのに運転室後方のステップへと出て行きます。O-SU駅では副機関士さんがステップで通票授受を行います。
減速する機関車のステップから副機関士さんはホームを待ち構えます。対向の貨物列車の機関車前に通票を投げ落とし、ホームの駅員さんと軽く挨拶を交わします。そして素手での通票取りです(8番)書道までの通票を確認して完了!
書道までの通票を取り、駅員さんと一言交わして副機関士さんが戻ってきました。次の書道までは□、「サ〜ガ〜ッ(四角)」と点呼をします。
すぐに出発信号機が進行となり、しばらくすると車掌さんから「1525列車、発車〜」と無線が入ります。列車は書道に向けて、汽笛を残して出発します。
※参照ページ全羅線O-SU駅にイソウロウ
列車はO-SU駅を発車、腕木信号機の横をすり抜けてゆきます。コンピューターでも電子装置でもない機械仕掛けの大きな腕が上下するイニシエの信号機にしたがって実際の列車が動く様は、当たり前とは知りながらも感銘高い心境になります。
四角の通票の入った大きな輪っかを左右に揺らしながら列車はうねった線路に沿って走ります。
列車は60〜70Km/h程の速度でのどかな農村を駆け抜けてゆきます。
遠くに新線の高架橋が見えたら書道駅はもう近いです。
列車は新線の高架手前で左カーブを駆け上がり、新線と合流します。今は赤茶けた右側の新線も間もなく列車が走ります。
列車は70Km/h程で書道駅に接近します。O-SU駅からの通票をここで落として、山城までは連動閉塞の新線に入ります。
副機関士さんが身を乗り出して通票投げの準備をします。エアコンの効いた運転室に生暖かい風が入ってきます。
駅員さんの足元めがけて通票を放り投げます。この時の速度は70Km/h超、副機関士さんと駅員さん、息が合わないと事故につながる危険の中、輪投げ1つでも熟練の技が出ます。
書道駅から山城駅までは既に開通している新線を走ります。(1番) 書道駅と通過すると一瞬だけ旧書道駅が見えます。将来公園になるそうで、この場所だけは往年のままで時間が止まっていました。(6〜8番) 将来の複線化を見越して長大なトンネル内のみ先に線路が敷いてありました。
※参照ページ全羅線書道駅にイソウロウ
新線をすべるように走り、列車は山城駅に到着しました。客扱いはありませんが、上り無窮花号との交換があるための運転停車です。新しい山城駅は山間にありながらホームが2面という豪華装備になろうとしています。
3分ほど待っていると旧線の坂を上って上り無窮花号がやって来た。新CIの機関車にリミット客車の編成。
上り無窮花号は南原からの通票を落として通過して行きました。その通票を受け取って出発準備完了!
すぐに出発信号が進行となり、列車はゆっくりと動き出します。次は今回の目的地、南原駅です。
山城を出た列車は、すぐに新線と分岐(2番)し、旧線を走ります。この区間はちょっとした山越えになっていて、軽い上下勾配の中、線路が右へ左へ線路が蛇行します。山を降りると急に視界が開けて南原の町並みが見えてきます(9番)
前方には後に全羅線最後となる場内信号機が見えて来ました。列車も徐々に減速をしながら接近して行きます。南原駅はこの辺りの主要駅でありながら、島式ホームが一本のみと言うシンプルな造りです。
列車はゆっくりと腕木信号機の下を通り、南原駅に進入します。
列車は定刻に南原駅に入線します。近郊への利用者から遠く麗水方面を目指す利用者まで、多くの利用者がホームで待っていました。
入線と同時に副機関士さんが機関車のステップに出て通票授受を行います。南原はホームの乗客が多いので、通票はホームに落とさず、通票受け器に投入します。多くの乗客の視線の中、次の周生駅までの通票を取って行きます。
列車は程なく所定位置に停止。今回のイソウロウはここまで。機関士さん、副機関士さん、ありがとうございました〜終点麗水まで安全運転で!
地方主要都市である南原は観光資源も豊富な全羅線内でも主要駅の1つです。駅には韓国の伝統的な純愛物語「春香伝」の案内板や韓国式建築を模した駅舎の至る所に韓国の伝統的デザインが多用されています。この駅も2004年8月5日を以って郊外の新駅に移転になりました。
日本時代からおよそ70年もの間、この地に脈々と息づいた全羅線。時代は21世紀になり、この全羅線も新しい鉄道へと生まれ変わり、新しい時代が始まります。新生全羅線への期待と共に、全羅道の歴史を見つめ、数え切れないドラマを運んできた旧線路には労いの言葉を掛けてやりたい気持ち一杯に全羅線を後にした…
イソウロウ日時2004年6月
全羅線は2004年8月5日を以って、直線化工事が完了し、任実〜書道、山城〜南原〜周生の旧線全区間が高架の新線に路線切替が完了しました。これに伴い信号系統も自動化され、通票閉塞も終了しました。また、五柳駅は廃止、鳳泉駅は移転及び信号場格上げ、オス駅と南原駅は移転となりました。