「台湾」自強號EMU100にイソウロウ



元祖電車特急!イギリス生まれの電車特急にイソウロウする。


↑台湾初の電車特急は1979年のイギリス製。
 

西部幹線を北上!山越え区間「豊原〜竹南」をEMU100で駆け抜ける。

 

豊原は台中市の北隣、台中県の拠点都市でもあり、多くの自強號が停車します。かつてはローカル線の東勢線も分岐していました。

今回はここ豊原から山線と海線の合流する竹南駅までをイソウロウします。
 

山自強號1018次、基隆行き到着!

 

暑い午後のホームにEMU100型の自強號1018次が滑り込んで来ました。

自強號1018次はEMU100型5両x2連による10両編成です。彰化駅を13時45分に出発した列車は山線から縦貫線を北上。台北を経由して、台湾北部の港町、基隆
(*)を目指します。 

*注)2006年現在は松山行きに短縮されています

EMU100のディテール
 

特急電車、EMU100を観察します。小振りの前面窓と対照的に本家イギリスのHSTをも髣髴させる優雅な側面デザイン、小振りの黄色いスカートや2段ステップ周辺の雰囲気と日本の車輌とはまた一味違う何とも70'sのブリティッシュデザインがさりげなくお洒落な逸品です。

元祖特急電車、EMU100

 

EMU100は西部幹線電化完成の1979年、台湾初の電車特急として英国GEC社5両1ユニットで登場しました。吊り掛け駆動、1M4TというヨーロッパらしいEMUの形態を持ち、最高速度120Km/hの俊足で台湾の看板列車として2006年現在も12ユニット60両が活躍中です。
更には2003年の宜蘭〜北
線電化時には花蓮にまで足を伸ばしました。しかし、2005年頃からは故障が多くなり、補機の連結を余儀なくされた時期も多くありました。現在は2ユニット併結の10両編成で、松山〜嘉義の自強号を中心に運用されています。

(左上)台湾高鐵の高架をバックに台北を目指す。 樹林〜板橋間
(右上)桃園駅を通過。望遠で捕らえるとサイドに特急らしい窓並びを感じます。
(左下)近代的な地下駅の板橋駅を発車。
(右下)新しくなった七堵駅でE300の貨物と共に待機中。EMU100は全車両が七堵に所属しており、松山発着の列車はここまで回送し、折り返し準備をします。

いざ、運転室

 

車輌観察もそこそこに台鉄の職員さんと共に運転室に向かいます〜☆

運転室の風景

 

EMU100はノッチとブレーキが右側についています。同じ貫通式のEMU300や自強号DRと比べると運転席は気持ち手狭な造りとなっています。


1018次列車長、出発待機中

 

列車長さんは乗客の乗降を見守り、発車の時間を待ちます。

(左下) 運転室後方の車長室。EMU100にも自動放送装置が設置されています。

(中下) 行き先表示のサボが積まれていました。
 

運転士さんの時刻表

 


自強號1018次の時刻表。運転士さんは松山から自強號1003次(E1000系)を彰化まで運転。彰化で休憩を取り、折り返し1018次を担当します。

1018次は列車種別をEMUとし、豊原→竹南間53.7Kmを41分。表定速度78.6Km/hの俊足を誇ります。
 

14時16分、自強1018次、豊原開車!

 



程なく出発信号が緑になり、私たちの列車は出発します。

運転士さんは無段ノッチを静かに動かすと、スーっと列車が動いて行きます。吊掛けモーターのEMU100ですが、モーターが有るのは10両中2両(前から4両目、9両目)のみ。先頭車にはモーターが無いので静かな走りとなります。
 

豊原市内を走る

 

列車はどんどん速度を上げて豊原市内を駆け抜けます。山線と言えど、彰化〜台中〜豊原は線形も良く、平坦な線路が続きます。

列車は北上


号車によって混雑具合がまちまちですが、平日の午後ともあって、およそ半数ほどの乗車率で列車は北上します。
 

スピードに乗って



列車は110Km/h程の高速を維持しながら走ります。

車内の様子

 



自強号の最大のセールスポイントは何と言ってもゆったりした座席。車内は角度の深いリクライニングシートにJNRのグリーン車を髣髴させるフットレストが装備されています。

乗務員スペース

 



列車内にある乗務員スペース。畳半分ほどのスペースには補助席にカウンター、照明や空調などの各種の操作盤、そしてサービス用の給湯装置があり、往年のままの豪華特急の設備を今に残します。

 

複線高架を走る

 



市街地を抜けると山線は山岳地帯に入ります。が、山岳と言えど1998年9月の線路付け替えにより複線電化の線路をいくつもの豪快な高架橋とトンネルで直線的に貫く路線へと生まれ変わりました。

 

現在の山線の風景

 


かつての山線と言えば、単線区間の山越え区間。台湾鐵路最高地点の勝興駅や古い橋脚、トンネルが続く西部幹線の難所でした。風光明媚な景色の旧山線の峠ですが、EMU100もこの険しい峠で幾度と無く力尽き、その都度電気機関車の救援出動を要請していました。

複線・高架・トンネルによる高速・平坦化が為された今では100Km/hを超える速度でサクサク走ります。

 

1019次との出会い

 

列車は高雄行きの自強號1019次とすれ違います。1019次は蘇澳から東部幹線を経由する長距離自強號です。

すれ違い〜后里駅通過

 


1019次との出会いの直後、前方には后里駅が見えて来ました。かつての難所の駅も何事も無いかのように高速で通過します。

直線が続く

 

列車は直線区間を激走。複線のトンネル、泰安トンネルへと吸い込まれます。

 

泰安隧道

 



泰安隧道は全長500m程の短いトンネル。1018次はあっという間に通過します。

長大な高架橋!

 



トンネルを抜けると壮大な高架橋が数Kmに渡って続きます。

泰安駅接近

 



新しい高架の直線を列車はすべる様に駆け抜けます。車窓には

前方には泰安駅が見えて来ました。

泰安駅通過!

 

難所と言われた山間の駅、泰安も今は高架駅。フルノッチであっけなく通過して行きます。

高架橋が終わると全長7728mの三義隧道に入ります。

 

三義隧道

 

列車は100Km/h超の速度を維持したまま三義トンネルに突入!静かな車内にトンネルの轟音ばかりが響き渡ります。

長〜いトンネル

 



列車は夜になったかのように長大トンネルを突き進みます。かつての銘駅、勝興駅を擁した険しい峠も今はこのトンネルで一直線です。

トンネル出口!

 

7Km超のトンネルを無事に走破し、前方には明かりが見えてきました。
 

三義駅通過

 

明かり区間に出た列車はほどなくして三義駅を通過します。

 

風景も山線らしく

 

三義駅を出ると1998年切替の新線は終わり、山陽本線や北陸本線、鹿児島本線などを髣髴させる複線電化の山越え路線となります。
 

長い下り坂を駆ける

 

三義駅を出ると列車は長い下り坂区間になります。運転士さんはブレーキレバーをこまめに操作、速度を調整します。

山線を快走!

 



電気ブレーキの唸り音を山間に残して「英國老婆仔(イギリスばあちゃん)」ことEMU100は軽快に走ります。

銅鑼駅と速達自強號1021次

 

前方に銅鑼駅が見えてくるとE1000の自強號1021次がやって来ました。1021次は始発駅の松山駅を出発すると終点高雄までは台北、板橋、台中、彰化、台南のみの停車。全区間375.6Kmを4時間16分、表定速度88.0Km/hの俊足です。

台灣の大動脈は屈指の特急街道。頻繁に特急列車がやって来ます。
 

銅鑼駅通過!

 

軽い汽笛で自強號同士の離合を迎えた後、列車はそれぞれの目的地へ激走します〜☆

山の線路は続く

 

列車は山間の鐵路をすべるように駆け抜けながら北上します。

(左中段) 双単線の山線。左右両側が上り線になったため、進行現示が2つ並びます。

(下段)カーブの減速を行い南勢駅を通過
 

カーブ区間を走る

 

南勢駅の辺りからは下りカーブが多くなり、列車も速度を落としながら走ります。運転士さんもブレーキレバーから手が離せません。
 

苗栗へ向けて

 

列車は60〜70Km/hの速度を維持しながら坂を下りてゆきます。次の駅は停車駅、苗栗駅です。

苗栗接近!

 


前方に人家が増えてくると苗栗駅も近くなります。
 

14時44分、自強1018次、苗栗到着

 

列車は定刻の14時44分、鐵路博物館の横をかすめて苗栗駅に到着しました。苗栗県政府のあるの主要都市は多くの乗客が待っていました。
 

14時46分、苗栗開車


列車は2分間の停車の後、多くの乗客を乗せ、台北に向けて発車します。
 

自強號は走る

 

苗栗を発車した列車は速度を上げ、山線を北上します。
 

多くの乗客を乗せて

 

苗栗から満員となった列車は吊掛モーターを唸らせながら前進します。激走とは裏腹に車内は静かで落ち着いています。

(右上)車長室の放送機器。自動放送機に置き換わる中、一部の編成では当初の味のある放送機器が残っています。

 

ブリティッシュ・サイドヴュー


列車は丸みを帯びた優雅な側面をアピールしながら常夏の台湾中部を駆け抜けます。

豊富駅通過!

 

遠く前方に新幹線(台灣高鐵)の高架が見えてくると豊富駅です。駅を通過し、赤いトラスの新幹線高架をくぐれば再び山の線路となります。
 

特急電車の走り

 

列車は汽笛も高らかに100Km/h超の速度を維持しながら山を縫って走ります。

まさに往年の485系L特急の雰囲気が甦ってくるようです。
 

造橋駅通過!

 

列車は造橋駅を軽快に通過します。

次は目的地の竹南駅です。

 

竹南駅に向けて


列車はモーターの轟音を上げながら竹南駅を目指します。

 

竹南駅進入

 

造橋駅からしばらく走ると左手に海線の線路が見えてきます。複線の山線の左に海線を合流させ、3本の線路で竹南駅に進入します。

 

14時57分、竹南到着

 

自強號1018次は定刻の14時57分、竹南駅に到着しました。今回のイソウロウはここまで。

自強號を見送る

 

列車は2分間の停車時間の後、帰宅ラッシュの台北に向けて走り出してゆきました。一路平安!祝旅途愉快〜!

 

自強號EMU100を後にする


台湾初の電車特急であり、自強號であるEMU100。最近は車輌老朽やE1000系の増備のあおりで運用数も減ったとは言え、まだまだ現役のインターシティー特急として活躍中です。台灣新幹線の開業に伴う台灣の交通体系の変革にイギリス生まれの元祖特急電車はどのような運命を辿るのか…ともあれ、その末永い活躍を願いつつ、竹南駅を後にした…

イソウロウ日時
2005年5月


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