「韓国」ソウル地下鉄2号線にイソウロウ〜第1部 環状への道〜
↑ソウルを一周する環状線、地下鉄2号線はソウル有数の過密路線。
環状線である地下鉄2号線はソウル市内を走る全ての地下鉄そして鉄道公社線の電鉄線と接続します。ソウルに住む人々、そしてソウルを訪れる訪問者にとっても大変重要な路線です。
1974年に1号線が初めて開業したソウル地下鉄は2004年に30周年を迎えました。これを記念して2004年の夏には1号線、2号線、4号線で特別装飾の電車が走りました。現在は市民の足、訪問者の足として欠かせないソウルの地下鉄。今回はそんなソウル地下鉄を代表する路線の1つ、2号線にスポットを当てます。
ソウルの町を一周する形で建設された地下鉄2号線はソウルでも最も忙しい路線の1つです。1984年に環状線として全通した路線は現在48.8kmの環状線に2本の支線が属します。直流1500V全線複線、右側通行の路線です。環状線は町の中心を流れる漢江を挟んで歴史ある味わいの江北地区、1988年のオリンピックから急速な発展を遂げたおしゃれな江南地区、緑のラインカラーを帯びた列車はこの対照的な2つの地区をじっくり走ります。今回は3部構成でこの地下鉄2号線にイソウロウしま〜す。
ソウル2号線には現在88編成、834両もの車両が在籍するソウル地下鉄屈指の路線です。(上段) 2号線の顔、最も多いグループ。1980年製の抵抗制御車から新しいものでは95年製のチョッパー制御車(右)まで様々なバージョンがあり、顔立ちや窓周りに微妙な違いがあります。抵抗制御 201〜214編成(※うち206〜209編成は新亭支線用6両編成、210〜214編成は聖水支線用4両編成)チョッパー制御(MELCO製) 215〜253編成チョッパー制御(GEC製) 278〜295編成※MELCO=Mitsubisi Electric Co.三菱電機の事です(下段右) 4号線から転入したグループ。通称「GECチョッパー」。独特のヨーロピアンスタイルで3号線と共に活躍中です。 261〜277編成 (下段左) 2005年から試運転を開始した新型車両。1980年製の抵抗制御車の置き換えを目的としています。2号線では初のVVVF(三菱製IGBT)車両です。その他、車内モニター、次駅案内表示器、来たる将来を迎えてのATOも準備されています。
地下鉄2号線には新亭、聖水の2つの支線があり、それぞれの沿線に車両基地があります。今回はソウル地下鉄公社(SMSC)より多大なご協力を頂き、新亭車両基地から出庫列車に同乗し環状線に漕ぎ出します〜!(上左) 新亭基地の建物の中にある新亭乗務事務所。出番を待つ運転士さん、車掌さんが憩います。(上右) 廊下には乗務カバンがズラリ。さすがソウルを代表する地下鉄路線です。(下右) 陽川区庁駅にある乗務員専用出入り口。
新亭基地の車庫の風景。住宅地の中にある新亭基地は周りを高層マンションに囲まれ、その真下に車両が休むという、スペースを有効利用した特異な形態になっています。
新亭乗務事務所で挨拶を行い、いよいよ電車の待つ車庫に移動します。乗務事務所の幹部、指導機関士の方より直々にご案内頂き、何番線も続く広大な車庫を横切り我々の乗る電車へと向かいます。
車庫の中では仕事を終えた電車、出番を待つ電車、点検を受ける電車と様々な電車が休んでいます。(左上,中下,右下) 2005年登場の新型車。これからの2号線を担う顔は丸みを帯びたスタイルです。(左中) 先頭に張られたハングルの看板は「内装材交換作業中」。大邱地下鉄の火災を受けて、ソウル地下鉄公社では内装材を安全な不燃材質に交換する工事を行っています。(左下) クリーム地に赤帯塗色、JNR301系のような顔立ち、ソウルで初めて走った地下鉄車両。1号線の初期抵抗車も1編成保存されています。
いよいよ今回イソウロウする244編成とのご対面です☆2号線といえばこの顔!日本人的にも大変親近感の沸くデザインです。
早速運転室にイソウロウ開始!運転室に入ると丁度車内の点検を終えた機関士(運転士)さんがやって来ました。ブレーキレバーを装着していよいよ電車のメイン電源が入ります!
機関士さんの時刻表。主要駅にはマーカーが塗られてあり、機関士さんは主要駅で時刻を調整しながら運転します。
244編成は17時28分新亭基地発の回送#6957列車として車両基地を出ます。営業列車としての始発駅である新道林駅に17時17分到着、進行方向を変える入換線(Y線)には17時33分に到着します。ここで17時45分発の#2350列車として2号線を半周し聖水駅に18時22分に到着。聖水駅で列車番号を#2408列車(聖水発・内線循環・聖水行き)として18時23分、引き続き、半周を走った19時11分、新道林駅に戻って来ます。ここで乗務は終了、次の機関士さんに#2408列車を引き継ぎます。
機関士さんは各装置の点検を終え、司令室と無線交信の後、出発準備に着きます。ソウルでも最も忙しい2号線、小さな不具合が多くの乗客に影響するため、何度も点検を行い、万全を尽くします。
構内の入換信号機が注意現示、いよいよ出庫の時間です!これから約2時間弱、ソウルを2号線で巡る旅の始まりです。
信号点呼の後、電車は夏のソウルの空の元へと踏み出します。広い構内を最徐行で走り、電車のコンディションを確かめます。
甲高いフランジ音をきしませて244編成は構内を走ります。
洗車場近くの停止ポイントで多忙な指導機関士さんとお別れ。「それでは安全第一でお願いします。」軽く言葉を交わして我々の列車はいよいよ地下区間へと入ります。
地下の出庫線
基地を出た列車はすぐに地下区間に入り、新亭支線と合流します。緩やかな下り勾配をブレーキを掛けながらゆっくり下って行きます。
電車はゆっくりと出庫線を走ります。しばらく走ったその時、機関士さんが後方の車掌さんに制動試験を行う連絡をします。そして我々にも「制動試験をするから、コケないようにしっかりつかまっててね〜」と。制動試験は先程も行いましたが、再度試験を行うようです…
制動試験を行うと言いながら機関士さんは一向にブレーキを掛けません。と、その時!ATSの停止信号と共に列車は非常ブレーキと共に急停止!そうです。ATS(自動列車停止装置)の作動試験です。出庫線にはATSの動作をテストを行うために、ATS地上子(線路に設置し、列車に前方の信号の情報を伝えるアンテナ)を通常より手前に置き、わざと前方の赤信号を無視する地点があります。列車が前方(画像左下)の信号機の手前で自動停止すれば動作良好という訳です。多くの利用者の安全を第一に考えた地下鉄。「安全装置は万が一の非常時のみに動くだけの物にあらず。本線に出る都度、必ずその動作を確認する。」 我々の知らない所で、いかなる事態にも対応できるよう、電車は何重にも安全試験が行われ、地下鉄が安全な交通手段であるという事が身をもって思い知る瞬間です。
我々の列車、回送6957列車は基地出庫線から新亭支線合流点へと向かいます
ATSの試験を終えた電車は新亭支線に合流します。営業運転中の5635列車をやり過ごし、出発信号を待ちます。
5635列車の通過を待って、回送6957列車は新亭支線へ合流します
17時11分、新亭支線に合流!
出発信号の現示を受けていよいよ新亭支線に合流。新道林駅を目指して走ります。
50〜60km/hの速度でソウルの地下を駆け抜けます。
前方に明かりが見えてくると道林川駅です。新亭支線は6両の専用編成により運行される為、本線を走る10両の回送列車は通過します。
回送6957列車は新道林駅へ向かいます。
新道林駅が近づく頃、指令からの無線が入ります。新道林駅からの営業運転に備えるため、各種運行状況を確認します。
新道林駅が見えてきました。退勤ラッシュで賑わう本線のホームを横目に電車は人のいない静かなホームへと停車します。
回送6957列車は新道林駅回送ホームに入線します。
いつも賑やかな新道林駅の中にあり、無人のホームを見ると不思議な感覚です。
回送ホームの線路にはATSの試験が出来るように地上子がいくつも並んでいます。
回送ホームに停止後、待機中も機関士さんは各装置の点検を続けます。(上段) 非常停止のテスト。軽く電車を前進させて非常ベルを作動させ、ATSにより列車を停止させます。安全装置が何重にも備わっている2号線電車は車両基地、入庫線、営業線と幾度も確実な作動を確認します。電車はこの後大林寄りのY線に入り、進行方向を変えて内回り線として営業運転を行います。
回送6957列車はY線へと入り、方向転換。同時に列車番号を2350と変えます。
数本の外回り電車をやり過ごし、2357列車の発車後、指令から無線指示があると同時に、入換信号機が注意現示となります。機関士さんは静かにノッチを入れ、電車が動きます。
電車は外回り線を跨ぎ、ゆっくりとY線に進入。Y線の終端には保線用のモーターカーが昼寝中でした。
Y線の奥に停車した後、進行方向が変わるため、機関士さんは手早くブレーキハンドルを落とします。準備を済ませて後方の運転室へ移動します。
エアコンの音だけが響く無人の車両を移動します。1両20メートル、10両編成で200メートルを歩いて移動です
果てしなく続く車両を移動。丁度真ん中の5両目で車掌さんとすれ違います(3番)。機関士さんは後方運転室に入り、すぐに準備開始!ブレーキハンドルを投入した瞬間からこの運転室が前方になります。
準備完了後、先行の本線内回り電車をやり過ごし、出発を待ちます。
2350列車は新道林駅の内回りホームに入り、営業運転を開始します。
出発指示を受けていよいよ新道林駅に入線します。この時点で列車番号も2350列車となります。
夕方のラッシュが始まりつつあるホームに2350列車は滑り込みます。
ゆっくりとホームに入り電車は所定位置に停止。いよいよたくさんの乗客を乗せて営業運転が始まります〜☆
1分の停車時間の間に機関士さんは灯火類の点検の為、一旦ホームへ出ます。
灯火と前面表示を確認し、いよいよ出発を待ちます。電車はこれから内回りの2350列車としてソウルの中心部へと踏み出します。第2部ではいよいよ営業電車としてソウル一周の旅が始まります〜☆
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