「台湾」高雄港駅にイソウロウ〜第2部 惜別の日々編 前編〜
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古豪入換機が入換作業員を従えて縦横無尽に行き交う姿ももうすぐ見納め。
港町高雄の旧市街地に位置する高雄港駅。かつての高雄駅として賑わいを見せた由緒ある駅も廃止が決まり、扱い貨物数も激減しました。廃止決定のニュースを聞きつけ再訪した高雄港駅。廃止ムードとは裏腹に広大なヤードはいつもと変わらない朝を迎えていました。
久々の訪問となった高雄港站運轉室。前回多くのスタッフの方にお世話になった運轉室も貨物列車の激減で人気が無くどこか寂しげです。
運轉室の中では職員さんが今日の入換作業の打ち合わせをしていました。前回は10人ほどの職員さんで賑わった事務所も今では数人のスタッフで細々と業務をこなしています。「今は前鎮駅がメインでこっちは仕事がないんだよ〜。駅がなくなるとオレ達も前鎮駅勤務になるんだ」と前回から顔見知りの職員さんの明るい表情だけは全盛期のままでした。
職員さんとお話をしているとビニール袋に入ったヘルメットと作業着が。駅の業務縮小で高雄港駅を去らざるを得なかったスタッフが返却したものでした。時代の流れにより鉄道の近代化が推し進められる過程での出来事。古いもの、不経済なものは淘汰される…どうする事も出来ないとは言え、やはり寂しい限りの現実が待っていました。
高雄港駅の廃止について
高雄の街を一周する形で敷設された高雄港線には高雄港と前鎮の2つの貨物駅があります。電化され近代的な前鎮駅とは対照に、非電化旧式の貨物駅である高雄港駅及び関係する路線(黄色の線)は収益の悪化と高雄市の再開発事業によりその機能を前鎮駅に統合され、廃止が決まりました。
気を取り直して、事務所にイソウロウ。午前中の貨物列車は9時半到着ですので、それまでは事務所にある多くの貴重な資料を見せて頂きました。
前回は朝から職員さんの賑やかな声が響いていた構内も静寂そのもの。運轉室の広い事務所もすっかり片付けられ、廟の線香の香りばかりが漂っていました…
事務所の表に出て腕木信号機に会いに行きます。幸いにもここは変わらない風景でした。
静寂な駅構内に飲み込まれるように静かに列車を待ちます。
保線員さんの除草剤散布用のトロッコがやって来た頃、事務所の電話が鳴り、貨物列車の前駅(鼓山)出発が連絡されました。職員さんは線路に出て貨物列車を迎えます。
程なくS200に連れられた貨物列車が到着しました。貨車10両と車掌車2両と全盛期に比べ編成も激減しました…
貨物の到着と共に入換作業が開始されます。編成の組み換えから検査車両の出し入れまで、減ったとは言え、作業は盛りだくさんです。
早速車掌車の突放!この瞬間から高雄港駅に活気が甦ります。
豪快な連結音、飛び交う構内放送、明るい無線の声、縦横無尽に闊歩するS200。これぞ高雄港駅をいった風景が繰り広げられます。
入換が一段落すると薬剤散布班の出番です。「今日、作業するは、終わり」と初老の作業員さんは片言の日本語ではにかみ、最後の仕事となる除草剤散布を始めました。
入換再開!
休憩を終えた入換班が再度動き出します。
午前中の入換作業の締めは検車段(貨車検車場)の車両を出し入れです。阿吽の呼吸で繰り広げられる渾身の突放風景は今も圧巻です。
午前中の入換作業が終わり、S200は検車段からの出場車両を従えて、鼓山〜高雄〜前鎮駅へと発って行きました。
入換の貨物が去った後は11時52分発の観光列車、2081次「DoDo火車(正餐列車)」を迎え入れます。テコを倒して場内の腕木信号機を進入現示にし、到着を待ちます。
遠くから汽笛が聞こえたらカラフルな車体のDR2900「DoDo火車」が到着しました。エンジンのアイドリング音やエアコンの音、貨物ヤードに特急気動車の空気がもたらされます。
前鎮駅〜高雄港駅からはタブレットによる通票閉塞。職員さんが列車から通票を受け取ります。
参照ページDoDo火車にイソウロウ
列車から受け取った通票は閉塞機のある北號誌樓行車室(信号詰所)に持って行きます。広い構内を歩く背後ではDoDo火車発車のエンジン音がこだまします。
関係者の許可を得て職員同行の上撮影
北號誌樓行車室の前に来ると上から紐がぶら下がっていました。職員さんが紐にタブレットを引っ掛けると上で信号員さんが引き上げて行きます。少しでも迅速な信号扱いが出来るように生まれた知恵。ここでしか見ることが出来ません。
DoDo火車はゆっくりと高雄港駅を後にして行きました
廃止が決まり、規模は減れど一旦列車が来れば、かつての賑わいに溢れた高雄港駅。今回は特別に取材の許可が下り、午後からはいよいよ非自動好きには魅惑のデパート、北號誌樓行車室にイソウロウしま〜す。
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