「韓国」大田鉄道車両管理段にイソウロウ


客車王国KORAILの知られざる整備拠点


↑広い構内に大きなトラバーサーが鎮座します
 

最寄り駅の新灘津駅

 

韓国中部の大田市は先端技術の街です。そして韓国鉄道公社の本社を擁する鉄道の街でもあります。ソウルから大田に向かって走る列車からは大田の手前で車窓に大規模な操車場が見えます。

しかし鉄道の街、大田にはもう一つ車窓から見えない知られざる車両基地があります。

それが今回イソウロウする「大田鉄道車両管理段」です。大田鉄道管理段は新灘津駅近くにあり、客貨車の重検修(全般検査)や大修理を担当します。

(左下) 京釜線から伸びる大田鉄道車両管理段への引込み線。
 

正門到着!

 

新灘津駅から車で約15分、大田鉄道車両管理段の正門に到着。ここは国家保安上大変重要な施設に指定されており、外国人のカメラが入るのも大変珍しいとの事だとか…(*^^*)

風景はローカルに

 

早速、担当者の方と挨拶を交わし、事前に交渉していた取材内容の打ち合わせを行います。

国家保安物に指定された重要な施設と言う事で今回は建物の内部や検修庫内部は撮影禁止。屋外のみの取材が許されました。

 


広い構内を歩く

 

早速正門から広大な敷地を歩きます。整備施設から管理棟、福利厚生施設と様々な建物があります。

客車整備場到着

 

早速客車整備場に到着。左手の整備棟から黄色いトラバーサーを介して右手に留置線が広がります。

客車留置線

 



広い留置線には多くの整備待ち客車が留置されています。


重症患者も入院待ち

 

大田整備場には大規模な補修設備もあるため、韓国全土から事故車が集められ、修理が行われます。

脱線事故、踏切事故、衝突事故と大怪我の車両はまた乗客を乗せて走る日を心待ちにしています。

(左下) 仮台車を履いた無窮花號の客車

客車整備棟

 


留置場の向かいには大規模な客車整備棟があります。車輪から座席、車体や電気設備といった様々な修繕・保守が行われます。

整備棟の風景

 

整備棟では今日も満杯の客車が整備中です。快適に列車の旅ができるのもこうした設備に支えられています。

アント登場!

  

軽いエンジン音と共に、小型のアントが車庫から出てきました。小さい車体に力持ちのアントはトラバーサーでゆっくりと移動し客車整備庫へと入って行きました。
 

貨車整備棟

 


大田鉄道車両管理段では貨車の整備も行われます。

貨物列車の多い韓国では貨車の種類も両数も多く、青、緑、茶、黄色と様々な貨車が集められています。

列車の部品たち

 

敷地内には多くの部品が整然と置かれています。台車、車輪、エアコンとその数にただただ圧倒されるばかりです。

構内の風景

 

暖かい日差しの中、静かに休む車両達、入換に奔走する貨車。客貨車の大病院の平和な昼下がりが続きます。
 

退院間近!リミット客車が最後の仕上げ

 

構内にはリミット客車と呼ばれる無窮花號の客車が検査最後の仕上げを行っていました。

外部から電源を引き込み最後のチェック。第一線に繰り出す日を心待ちにしているようです。

 

リミット客車の試作モックアップ

 

現在無窮花號で大活躍のリミット客車ですが、2001年の登場に先駆けてここ大田で試作品のモックアップが作られました。当初案では白地に青を基調にした塗色デザインも考えられましたが、量産車は従来の無窮花號を継承した塗色へと落ち着きました。

幻のリミット客車

 

モックアップの内部を見物します。その当時は韓国鉄道でも画期的デザインの客車は、2000年頃からこのモックアップで各所の試行錯誤を繰り返したそうです。内装はほぼ現在のリミット客車に受け継がれ、今では無窮花號客車の標準型へとなりつつあります。


 

車両の最期を迎える地

 


新しいものが生まれれば古いものは姿を消す。大田車両管理段のもう一つの顔、車両の最期を迎える場、車両解体場があります。

解体場の風景

 

第一線で活躍し、その任を退役した後、廃車になった車両。幸いにも売却や静態保存されるほんの一握りを除き、その最期は人知れず、あっけなく解体されてしまいます。解体現場にはスクラップ輸送のトラックが頻繁に往来し、命を失った車両の残骸は新しい鉄製品へと生まれ変わります。

(右下) スクラップ運搬のトラックの仕切り板にも貨車の扉が…

合掌…統一號の最期…

 

そしてここにも最期を迎える車両の姿。韓国の鉄道を縦横無尽に走り、多くのドラマを運んだ統一號の客車です。自らの運命を知ってか、悲鳴を上げることもなく静かにその姿を崩して行きます…2004年3月の統一號全廃から2年、ここで突然に本当のお別れを目の当たりにし、ただただ立ち尽くすばかりでした…

ありがとう、統一號!さようなら、統一號!今度生まれ変わる時もまた鉄道車両であれと声を掛けながら…(T_T)/~~

 

施設散策

 

統一號との衝撃的なお別れから気を取り直し、施設を散策します。新たにリフレッシュする車両、この世から消え行く車両、広大な施設は様々な運命をも呑み込みます…


往年の名機、SLミカ3-129号

 

イソウロウの最後は構内に静態保存された蒸気機関車の名機、ミカ3を訪ねます。戦前の鮮鉄時代から「ミカ」として活躍し、戦後も韓国の鉄道を牽引した往年の名機は、儀旺の鉄道博物館の展示機が有名ですが、ここ大田でも大切に保存されています。

ミカ3のディテール

 

1-D-1の「ミカド」と呼ばれる軸配置の機関車で、3番目に開発された形式故に「ミカ3」を名乗るこの機関車。まさに「韓国のD51」よろしく貨物を中心に大活躍をしました。今は後輩客車の移り変わりを見守りながら静かにこの地で余生を送っています。
 

大田鉄道車両管理段を後にする

韓国客貨車の大病院、大田鉄道車両管理段は、ソウル(龍山)の車両整備場、釜山の機関車整備場と共に韓国鉄道の3大整備拠点の1つに数えられます。韓国で客車列車に乗った時、当たり前のように明るい車内に、リクライニングする座席、快適な空調に眠りを誘う乗り心地…この全ての「当たり前」を「当たり前」として維持する整備基地…消え行く車両の来世での幸福を願いながら、大田鉄道車両管理段の更なる発展を願いつつ、広い敷地を後にした…

イソウロウ日時
2006年5月


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