「台湾」内湾線DR2510にイソウロウ

〜前編 団体貸切列車をスタンバイ〜


「桃林鐵路」で活躍中の気動車DR2510。今日は一日限りの団臨運転。


↑朝の樹林の車庫でタロコ号と共に休むDR2510。
今日は特製ヘッドマークを掲げて内湾線を臨時運行します
 

Special Thanks to

路總部
Luke's Depository

路總部

今回の貸し切り列車を企画した台湾の鉄道趣味のコミュニティ。中でも高度な撮影技術と作画センスに長けた会員の皆様の撮影作品は台湾の鉄道写真の世界をリードしています。

最近は撮るばかりでなく乗って楽しむ・集めて楽しむなど撮影にとらわれず幅広い活動を行っています。
 

 

今回の出発地、樹林機務段

 

最近台湾でもよく走るようになった鉄道ファンによる貸切団体列車。2007年1月13日は台湾の鉄道ファンコミュニティー「路總部」により、なんとDR2510型気動車を用いて内湾線を運転する団体列車が運転される事となりました。

今回は「路總部」の皆様の多大な御好意により、運転区間の樹林〜内湾のうち、樹林〜九讚頭までを同乗させて頂けることになりました。
また、弊事務所独自取材として樹林の機関区から鉄道ファンを乗せた楽しい団体列車の舞台裏にイソウロウしま〜す。


と言う訳で、出発3時間前、車両基地である樹林調車場にやって来ました。前回のイソウロウからおよそ3年振りにこの門をくぐります。

樹林調車場の風景

 

樹林調車場の風景。東部幹線の花蓮電化によりDLが減少したかに思えましたが、まだまだ多くの柴電(ディーゼル機関車)が広い構内で準備に励んでいました。

職員さんの誘導で足早に車庫へと向かいます。
 

ちょっと寄り道、TEMU1000系振り子特急電車に会おう!




DR2510に会いに行く前にちょっと寄り道。試運転準備中の台鉄の最新特急電車、タロコ号ことTEMU1000系に立ち寄ります。

この車両はJR九州の「白いかもめ」等に使用される885系特急電車をベースに山口県の日立製作所で製造され、4両1ユニットの8両編成で構成されます。台鉄風にアレンジされた斬新でスタイリッシュなデザインで樹林〜台北〜花蓮区間を「太魯閣號(Taroko Express) 」として俊足を発揮します。

TEMU1000系のディテール

 

まずは外観を撮りまくりです^^ゞ振り子特急らしいサイドライン、台湾高鐵を意識したかのような白いボディーにオレンジと黒のカラーリング、台鉄初採用のLED式の尾灯とどこを取っても斬新かつ親しみの沸くデザインです。
 


TEMU1000系の車内

 

車内も観察します。ゆったりしたシートと小窓の並ぶ雰囲気は観光地を目指す特急電車としてふさわしい居住性を持ち合わせます(*^^*)

ちなみにタロコ(太魯閣)は台湾東部にある渓谷の名前。台湾では誰もが知っている観光名勝です。今までは政治的スローガンを掲げた列車名も、一般公募により集めた行先地付近の地名にちなむと言う斬新なアイデアで今後の台鉄の方向性をも伺わせます。
 


「タロコ号」のコックピット

 

そして忘れてはならないのが運転室。運転室の機器類は通勤電車のEMU600を基調にしているとの事で、JRの885系とは一線を画します。

運転室のディテール

 

運転室のディテールを撮りまくりです。日本と違いハンドル位置がマスコン、ブレーキ共に運転士右側に寄っているのは台鉄EMUの伝統です。そして中央のディスプレイはATPのモニター、右側のディスプレイが車両状態などの表示となります。

(右上)TEMU1000のマスコン。まるでEMU500,600と同一の仕様です。ちなみに営業最高速度は130Km/hですが目盛りは140Km/hまで刻まれています。

(左下)台湾のEMU定番の装置類左上の青色の物が通信装置、左下の薄黄色は非常警報装置、右上が次の停車駅を表示する装置、そして右下はATPを使用しない場合に速度計として使用するモニター。


試運転準備中の車内

  

取材当時のタロコ号はまだ試運転段階。座席には乗客に見立てた計測用の重りと中間車の車内には計測機器がセットされていました。この重りは1枚15Kgの板を何枚も重ねたもので、台湾高鐵の700Tの試験時にも同じ物が使用されていたそうです。

(左下)水を入れて重し代わりにする巨大なポリタンク

(右下)車外LED案内板も試験中。将来は西部幹線投入も視野に入っているためか「Pingtong(屏東)」の文字が表示されていました^^;;

お待たせしました!DR2510と再会!

  

今回の主役、DR2510型です。台湾唯一の藍色気動車も現在は「桃林鐵路」専用車として側面・内装共に派手なラッピングが行われました。




桃林鐵路について

2005年、桃園県政府は桃園市内から海へ抜ける貨物線、林口線の旅客営業の可能性を探るため、台鉄とタイアップして平日の朝夕に無料の通勤通学列車の運転を始めました。当初はDR2700型に専用ラッピングを施して運行を開始しましたが、現在は七堵に所属を移したDR2510型2両編成がその任を担います。DR2510を臨時運行させる前日の2007年1月12日は普段平渓線で働いているロングシートのDRC1000型2両が代役を務めました。この「区間車」用車両DRC1000は「普通車」であるDR2510型の検査や修理時にも代役として桃林鐵路を運行することがあります。

おすすめサイト(日本語)

台灣黄昏地帯
桃林鐵路の列車に密着取材。臨場感あふれる車内や沿線の様子は必見です。

GP7500鐵路の轍
撮影の難しい貨物線としての林口線の迫力ある姿を記録しています
 

 


DR2510のディテール

 

DR2510のディテールを撮ります。登場からおよそ1年、ラッピングも少々ほころびが出ていますが、薄いオレンジのセピア調の背景を基調に、奇抜なデザインイラストが付く姿はいかにも台鉄風です。

そして今日は特製ヘッドマークを掲げます。DR2510にはヘッドマークホルダーがない上、チューブ型の幌が付いているため、取り付けには苦労があったとの事です。
 

出発準備の風景

 

列車に乗り込むと、車内清掃のスタッフが車内清掃の真っ最中でした。床、座席、網棚と丁寧に拭いてゆきます。



楽しい旅を陰で支える清掃スタッフの皆さん、お掃除ありがとうございますm(__)m

運転士さんも到着

 

程なく出勤点呼を終えた運転士さんもやって来ました。手際良く車両をセッティングすると車内は照明が灯り、出庫の時を待ちます。

DR2510の車内

 

転換セミクロスシートだったDR2510は現在はロングシートに改造されています。
 

路總部会長も到着

 

車内で休んでいると路總部の李会長が息子さんと共にやって来ました。


「李会長、おひさしぶりです〜」

「久しぶりですね〜……って何でここにいるの!?」

「タロコ号の取材があったので先に入っていました」

思わぬサプライズゲストになってしまいました。驚かせてゴメンナサイ〜^^;;

(下段)会長が手にしていたのは台湾鐵路局の「行車電報」。今日の団体列車運転に関して関係各部署に通達されます。

行車電報

 

行車電報には団体列車に関してダイヤや運行表など様々な記載があります。今回の列車番号は

571A(回送)
樹林調車場(機関区)→樹林駅
571次(速度種別:DR速)
樹林駅→新竹→内湾
572次(速度種別:DR速)
内湾→新竹→樹林
572A(回送)
樹林→樹林調車場

となります。団体列車としての営業は571次〜572次です。

(左下) 内湾線の竹東・九讚頭の腕木信号機付近はファンが撮影しやすいように制限速度15Km/hで徐行して走ります。

 

9時47分、構内入換開始!

 

車掌さんを乗せて程なく入換開始の無線合図が来ました。現在検修線の11番線に止まっているDR2510を出庫準備線の1番線へと転線させます。
 

DR2510、入換中

 

DR2510は入換のために一旦外へ出ます。車内には台湾の冬のほろ涼しい風が入って来ます。
 

樹林の構内

 

広い構内では入換作業が盛んに行われていました。
 

方向転換、1番線へ

 

列車は方向を変え、1番線へと入ります。無線や入換スタッフと綿密に打ち合わせ、ゆっくりと走り出します。


1番線入庫

 

程なく1番線へ入庫。奥にはEMU500が午後の出番に備え一足お先に休んでいました。
 

DR2510、出庫待機中

 

1番線で出庫時間まで暫く待機します。

10時19分 出庫指令

 

いよいよ出庫指令が出され、列車は軽くタイフォンを鳴らして車庫を後にします。そして広い構内を走り出発線へと到着しました。

列車番号571A、出発待機

 

ここから列車番号571AとなったDR2510は出発線で再度待機します

発車を待つ

 

発車前のひと時。今日は土曜日とあって西部幹線が混雑しており、臨時列車はその僅かな隙に入り込む形になります。緊張の運転を控えてDR2510はスタッフ共々つかの間の安堵の時間を送ります。

(右下)DR2700を改造した「電線検修車」CM80型が休んでいました。

(左下)今日の西部幹線はダイヤが乱れています。先行列車である自強1015次は4分の遅れで通過。樹林駅では上りホームに停車予定ですがなかなか入線の隙が取れず、出庫予定時刻になっても出発指示が出ません。

 

10時41分 571A次、開車〜!

 

予定出庫時刻より25分遅れで出発指示が出ました。いよいよ我々の列車は乗客を迎えに樹林駅へと繰り出します。
 

樹林の入出庫線を走る

 

列車は3線区間の一番左端、入出庫線を走って樹林駅へと向かいます。右側の複線が西部幹線です。
 

樹林駅へ

 

前方に樹林駅がホームが見えました。ホームには今日の特別列車を迎えるカメラの砲列が。台湾の精鋭撮影人が我々の列車をファインダーで見つめています。

10時46分、樹林駅第2月台到着

 

かくして列車は樹林駅に到着。駅員さんが2両編成のDR2510の停止位置を合図します(3番)

これまで静かだった車内が鉄道ファンで一気に活気付きます。定刻よりかなり遅れていることもあり、運転士さんも手早く方向転換を行います。

(9番)我々の後続列車、高雄行きの19次を先行させます。
 


さぁ!貸切列車の旅が始まります!

出発を待つホームでは多くのファンがDR2510の姿をカメラに収めます。台湾の良き鉄道ファンクラブの貸し切った臨時列車はこれから内湾往復の旅路に就きます。

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