「韓国」京元電鉄線にイソウロウ〜第2部 街乗り電車で出掛けよう!〜
↑議政府北部駅から生まれ変わった佳陵駅。ホーム1本のかつての面影はどこへやら、今や立派なホームの郊外駅です。
ソウル首都圏の東北部を走る通勤路線「京元電鉄線」。2006年12月には念願だった議政府北部(佳陵)〜逍遥山まで延伸し、更なる電鉄網の拡大となりました。京元電鉄線の第2部に当たる今回は、延伸部にある州内駅から城北駅の間をイソウロウします。
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駅名/Station
乗換/Transfer
州内Junae
ソウル郊外、楊州市に位置する州内駅は京元〜1号線〜京仁線系統の運転拠点駅です。かつてはホーム1本の無人駅で列車は5両編成の気動車が1時間ヘッドと言うローカル駅でしたが、今やホーム2面の立派な高架駅です。(下段中・右) 最近導入されてきたICカード専用改札機。従来の切符を投入する部分が黄色い板で塞がれています。
今回の相棒は1号線系統(京釜・京元・京仁)では初のVVVF電車となった”3ドゥリ”こと初期3VF車(いわゆる5000系初期車)です。VVVF駆動の交流モーターの採用、新抵抗車の流れを汲む角ばった前面デザイン、ステンレスの車体と、製造後10年が経過していながらも、まるで古さを感じさせません。
今回も城北電動車事務所をはじめとする韓国鉄道公社の多くの関係者の方より、多大なご厚意・御協力を頂き、運転室イソウロウです。京元線・議政府以北は軍事施設や軍用引込線も多く、撮影及びHP公開が大変困難ですが、今回は州内駅からの添乗の許可を頂きました。御協力いただいた関係者の皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
早速運転士さんがブレーキ弁片手に列車の出発準備をします。電動機のテストや列車番号の設定などの準備をてきぱきと済ませ、出発を待ちます。
運転室を観察します。計器・機器配置は1990年代半ばの車両に共通しています。
運転室の機器は日本製とノックダウンの韓国製が入り混じります。ノッチは0〜4の無段式(中段左)ブレーキは8段(中段右) 動かした感覚では、抵抗車よりレバーが気持ち固めです
3VF車には運転状態などを表示するカラーモニターが装備されています。ドアの開閉、モーターの状況、速度、圧力、現在地など様々な情報を表示・記録します。(下段左) このシステムは日本製故に運転士さん(左)・車掌さん(右)が帽子をかぶっています(韓国では普段帽子を着用しません)。ちなみにこの画面は初期画面。機関士(運転士)さんは機関士画面、車掌さんは車掌画面と、目的にあった画面を選択して表示させる事が出来ます。この他にも故障とその対処法を検索できる画面や、設定・記録画面など機能が盛りだくさんです。
車掌画面では扉の開閉状況や空調装置の状況、そして車内の案内表示板の表示内容をモニターします。緑矢印の先のひらがな「いああ」は左向き矢印の文字化けした姿です。日本語の案内表示の無いVVVF車両ですが、車掌室ではこうして毎日ひらがな表示が出ていました^^;
列車番号の管理装置は支援モニターの上にあります。始発駅ではここに列車番号を入力します。今回の列車はK75列車。州内から仁川までの各駅停車です。8時39分に州内を出発し、約2時間掛けて仁川を目指します。
出発20分前に運転準備が完了し、出発準備が完了しました。休日の朝とは言え、車内にも少しづつ乗客が乗って来ました。
8時39分、K75列車、州内発車
発車の時間が来ました。ドア閉を注意するブザーが客室内に鳴り、戸閉め。列車は静かに州内駅を後にします。
今回の運転士さんのダイヤ。城北から乗務した運転士さんは州内で折り返し、K75列車で城北までを乗務します。京元電鉄線を走る列車の中でも州内と逍遥山を折り返す列車は城北(電動車乗務事務所)の機関士さんが担当し、東豆川折り返しは九老の機関士さんが担当します。
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緑楊Nogyang
列車は国道3号線に併走する高架線路を走り、程なく緑楊駅に到着します。
30秒停車の後、戸閉め灯の点灯と車掌さんからの出発合図(ブザー)を確認し列車を発車させます。3VF車のマスコンは安山線電車やメトロのGECチョッパーなどと同じタイプ。ハンドルを押しながら回します。
郊外線合流〜佳陵駅
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佳陵Ganeung
右手前方に立派になった郊外線の高架を合流させ(3〜5番)、佳陵駅に到着します。ここはかつての「議政府北部」駅。ホーム2面の立派な高架駅です
佳陵駅を出ると高架から地上に降り、すぐに議政府駅に到着です。ホームには都心を目指す多くの乗客が我々の列車を待っていました。
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議政府Euijeongbu
議政府は京畿道の第2庁舎を有する首都圏東北部の拠点都市です。かつては京元線(新炭里方面)や郊外線の始発駅として京元電鉄線と接続していたターミナルでした。(右下) 今は東豆川始発となった京元線のCDC。始発駅を譲った議政府駅ですが、基地のある龍山までの運用の都合で現在も1編成が待機し、日中にその姿を見ることが出来ます。(左下) かつての長距離線窓口は今も営業中です。
議政府駅を出るとすぐにデッドセクションになります。我々の走る下り列車にとっては何気ない死区間ですが、議政府駅に向かって走る上り列車は議政府駅構内のポイント切替等の為にセクション直前で信号待機する事もあります。セクション直前で運転停車をさせられた列車がうっかりセクション内にフルノッチで突入してしまったり、セクションを控えてなるべく加速させたいという気持ちが焦り、ATSのパターンに当ててしまったりと知られざる「電車運転の難所」です^^;(6番) セクション通過中は回生ブレーキが使えないため、モニタにも「回生制動開放」の文字が表示されます。
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回龍Hoeryong
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望月寺Mangwolsa
列車は回龍駅を出発、望月寺駅へ到着します。
列車は望月寺を発車します。次は7号線接続駅の道峰山駅です。
(6〜9番) 車両基地のある長岩からの7号線が寄り添い、併走します。丁度7号線電車が本線上で折り返し待機中でした。
交流区間の京元電鉄線を走る我々交直流電車と直流区間の7号線を走る電車が並びます
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道峰山Dobongsan
都市鉄道公社 7号線
建大入口・温水 方面長岩 方面
SMRT LINE 7
for Konkuk Univ.・OnsuJangam
列車は道峰山駅のホームに滑り込みます。この駅でも多くの利用者が乗ってきました。
列車は道峰山駅を発車、道峰駅に到着します(8〜9番)道峰山駅と道峰駅は駅名が似ている上にメトロ1号線の東廟アプ駅開業時に駅番号も1つシフトしているため、誤解を招きそうです^^;
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道峰Dobong
道峰駅を出発すると沿線には高層マンションも多くなります。
前方からは郊外線を経由して京義線水色駅を目指すバルクセメントの貨物列車がやって来ました。勾配の険しい郊外線を走るため、編成の前後に機関車を連結したプッシュプル重連です。
プッシュプルの貨物とすれ違うと放鶴駅へ到着です。
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放鶴Banghak
放鶴駅を出た列車は、4号線接続駅の倉洞駅へと到着します。
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倉洞Chang-dong
ソウルメトロ 4号線
忠武路・舎堂・安山 方面タンコゲ 方面
Seoul Metro LINE 4
for Chungmuro・Sadang・Ansan Danggogae
倉洞駅で更に乗客を乗せて列車は鹿川駅へとたどり着きます。
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鹿川Nokcheon
鹿川駅を出ると中浪川に沿ってつかの間の郊外的な車窓(?)を楽しむ事が出来ます。
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月渓Wolgye
列車は月渓駅に到着。次は目的地の城北駅です。
列車は城北駅へ向けてラストスパートです。
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城北Seongbuk
州内駅から30分弱、列車は城北駅4番線に到着しました。今回のイソウロウはここまで。
運転士さんは停車すると荷物をまとめ、仁川まで乗務する運転士さんにバトンタッチ。電車を見送ります。
(中段右) ラッシュアワーに運行される「東豆川急行」(下段) 城北駅は京春線の分岐駅でもあります。京春線は現在電鉄化工事の真っ最中で、電鉄化が完成すると城北駅での長距離列車の行き交う風景も見られなくなります。
参照ページ夜の城北駅から仁川へ!夜の広域電鉄にイソウロウ〜第3部〜
今や韓国の通勤電車には欠かせない存在の3VF電車。1997年のデビューから10年、トングリやマティズと韓国独自のスタイルに顔を変え、不燃化、方向幕のLED化、低騒音化、インバータのIGBT化とモデルチェンジを繰り返しながら進化を続けるロングセラー。その影で各所に日本の通勤電車の技術も垣間見えます。延伸の勢いが止まらない韓国の広域電鉄網。路線の拡大と共に主力である3VF電車が今後どう進化し、どんな活躍を見せるのか、その将来に期待と思いをはせながら、城北駅を後にした…
イソウロウ日時2007年5月