「韓国」機関車8200にイソウロウ〜前編 ドイツのかしこい万能機関車〜
↑最近急増中のニューフェイス、8200号万能機らしく山岳の産業路線から主要路線へと活躍の場を拡大しています
Korailの主力となりつつある万能電機、8200号に会いにソウル郊外、おなじみ水色の機関区にやって来ました。建物が新築された機関区庁舎は食堂から宿舎・休憩所まで完備。真新しい庁舎で取材打ち合わせを行います。
すっかり新塗色機関車の増えた水色の機関区。8200号の導入を機に構内は電化が進みました。将来は新型振子電車TTXや、今後導入される電車特急、日立無窮花(←機関士さんたちはこう呼びます)も迎え入れる水色機関区、いよいよ電動車両時代の到来を感じさせます。
交渉すること6ヶ月、機関区停泊中の電機の取材を認められましたので、早速見学です☆8200号はドイツ・SIEMENS社の汎用電気機関車「Eurosprinter」の韓国向けといった位置付けで、2002年からRotemにてノックダウン生産が開始されました。Eurosprinerはドイツ鉄道(DB)の貨物牽引機、BR152型をはじめ欧州各地の鉄道で大活躍中です。目の前にはトップナンバー8201号。この場所だけ見るとヨーロッパのどこかの機関区にいるかのような不思議な感覚です。Betriebswerk Susaekの8201。ヨーロッパの鉄道を韓国で知る瞬間です。
早速機関車を観察します。(上段中) 運転室への扉にはドアハンドルが2つ付いています。2つのハンドルは連動して動き、線路上から乗り込む場合は下のハンドルを、電鉄ホームや洗車・研修線などの高い位置から乗り込む場合は上のハンドルを開けて乗り込みます。(下段左) 1300kwとハイパワーな三相モーター。山岳勾配路線から平地の高速運転まで驚異の牽引力を発揮します。
外回りを一周した後は、いよいよ車内へと入ります。
8200号の運転室を観察します。ハイパワーなスペックとは裏腹に運転台はすっきりシンプルにまとまっています。
(上段左) 空気圧力計とATS装置。KTXとほぼ同じ配置です(上段中央) パネル中央には2つのメーター。右が速度計で左はトルクメーターです。(中段右) 5200kwを動かすマスコン。ノッチレスに見えますが、最初に2段ほどノッチがあり、その後ノッチレスとなります。(下段) ブレーキハンドルは3つ。連なった2つのハンドルはそれぞれ機関車と客車ブレーキです。機関車用は回生ブレーキで、客車用はエアブレーキです。基本的には2つのハンドルは連動して動きますが、機関車制動用ハンドル(真ん中のレバー)の頭を押すと、機関車用のブレーキハンドルは単独で動かす事が出来ます。1つ離れた短いハンドルは機関車単独のエアブレーキです。
運転室内部を更に観察します。長距離運転・貨物運転を考慮したドイツならではのかしこい機能が満載です。(上段) 運転室の側窓は上下に開閉するタイプ。窓の横には補助主幹制御機と呼ばれる小さなハンドルがあり、低速域での加速・減速が可能です。上段右写真の窓の下に写っている黄色い箱に赤いノブの付いたハンドルは叩くと非常ブレーキが掛かります。この機関車の試運転時、同乗した関係者が何も知らずカバンを掛けるのに丁度良いとカバンを掛けてしまい試運転列車が非常停止したエピソードがあるそうです^^;;(中段) 副機関士席の後方には冷温蔵庫が装備。スイッチ1つで冷蔵庫/温蔵庫の切替が出来、飲み物やお弁当を入れることが出来ます。(下段左) 座席にはドイツのブランドISRI社の座席を採用
いよいよ心臓部に入ります。内部はモジュール化が進んでおり、すっきりしています。
(左上)初期車限定のSIEMENS社の銘板。その後の量産車はRotemによりノックダウン生産され、Rotem社の銘板が付いています。8200号はSIEMENSのインバーターを搭載している為、JRのE501系や京急電車までは行かないものの、起動音がいかにもシーメンスな(?)メロディアスな音を奏でます♪
参考8200号の起動音790kb/wmv2007年1月、東海駅で収録♪パ〜ラ〜〜リ〜〜
8201号の見学を終えて機関区で昼食を頂きます☆お昼後の時間でしたので貸切状態ですv(^_^)今日のメニューは穀物入りのご飯と韓国式のお味噌汁、芋と肉じゃが風のお肉の煮物、キムチと韓国海苔が付きます。いつ食べても美味しい食事に感激です☆トレイに盛っていただきま〜す!ご飯の盛りすぎを機関区の栄養士さんから「炭水化物摂り過ぎ!」と注意されつつ…^^;;食事の後はいよいよ添乗です☆
食事を終え、待ちに待った添乗取材です。留置線には今回のパートナー、8217号がスタンバイしていました。8217号はこれから無窮花1217列車として港町、釜山を目指します。イソウロウ組はここ水色から途中の天安までを運転室イソウロウします☆
程なく機関士さんと副機関士さんがやって来ました。機関士さんは機関車の中で起動準備、副機関士さんは機関車を一周して各所のチェックを行い、機関車を起動!(8番) 8200号の起動画面。Rotemのロゴが表示されます。
情報パネルもドイツ流
運転台にある大きなディスプレイ。機関車の速度、モーターの状態、電気回路の状態、空気圧力と各状態の表示、そして故障時の操作マニュアルや操作履歴とあらゆる情報を表示/操作します。シーメンス・ヴェラロことICE-3等の最近のドイツ製車両でもおなじみのディスプレイ。8200号でも主要な装備です。(左上) 通常の運転画面。一番左の青いバーが架線電圧。その右横が電流。そして4つのモーターの牽引力をそれぞれ表示します。(左下) 空気ブレーキ系統の画面(右上) 補助電源の状態表示画面(右下) 列車番号の設定画面
メーター類のテスト
メーター類のテストを行います。メーター下にずらっと並んだ丸い表示ランプ類はいかにもドイツのキャブです☆(右上) トルクメーターのテスト。黒い針は現在のトルクを表します。加減速の無いときは0位置で、加速中は右に動き、減速中は左に動き、そのトルクを表示します。メーター外周の赤い印は機関車重連運転時、補機のトルクを表示します。単機運転時は黒い針と連動します。(右下) 表示ランプ下段右端の白いランプは客車戸閉め灯。制御客車によるプッシュプル運転を行うドイツ車ならではの装備です。
出庫準備が完了。いよいよ出庫の時です!機関士 「水色信号管制どうぞ、8217出庫準備完了」信号管制室 「信号管制です。8217号は1217列車に連結。5番発着線に客車があります。出庫線で一旦停止して入換係さんの指示に従ってください。どうぞ」機関士 「了解。出庫します」
ノッチを投入すると、8217号は「パ〜ラ〜リ〜」とお決まりのインバーター音を奏でながら加速してゆきます。(2番) 4個のモーターの牽引力を青いバーで表示します。回生ブレーキ時は黄色のバーで表示されます(5番) 単機牽引では少ないトルクで電車並みに加速します。あっという間に20Km/まで加速します。(9番) 待っていた入換係さんの前に一旦停止し、無線で挨拶を交わします。
入換信号が開通表示をし、8217号は引き上げ線へと向かいます。(2番) 加速する8217号。遠くに見える波を打った屋根は工事中の電鉄水色駅。(3,4番) 南へ向かう列車は逆光になるため、ウォッシャー液でフロントガラスを掃除します。ウォッシャー液は副機関士席背面のスイッチで操作します。(9番) 京義線のCDCをみながら電鉄工事真っ盛りの引き上げ線に入線します。地盤の弱いこの辺りはこの1ヵ月後、路盤崩落事故を起こしてしまいます(--;;
ここからバックして客車を迎えに行きます。マスターキーを抜いて後方運転台に移動します〜
後方の運転台へ移動します。丁度長項線のセマウル号が出庫して行きました。
セマウル号の出庫を待って入換信号が開通現示。汽笛を鳴らして5番発着線に客車を迎えに行きます。
いよいよ客車に接近です。無窮花号1217列車は電源車と一般室6両、食堂車の8両編成です。8200号はSIVによる客車用電源を搭載し、電源車は不要です。現在はDLと共通運用している上、車販準備室の関係で電源車を連結していますが、将来的には電源車を省略した編成も登場するとの事です。
いよいよ連結作業です。副機関士さんが側窓から客車との残り距離を確認。機関士さんはこまめにノッチを動かしながら歩くよりゆっくりな速度で慎重に接近します。程なくガチャンと衝撃も無く無事連結完了。入換係さんの合図で機関車を数センチ後退させ連結を固めます。
客車との連結が無事完了。単機の8217号は出庫列車、H1217列車となります。
再度前方運転台へ戻ります。ホース接続中は急激に圧力な変化があるため、空気系統の故障表示と共に、音声(韓国語)で故障を知らせます。(2〜4番) 機器室の通路は話し声が聞こえないほどの強烈なブロワー音がします。運転席に入って通路の扉を閉めるとその音はぴたっと止み、驚異の防音を実感します…
空気圧が正常に戻り、組成完了。指令に組成完了を報告して出庫の時を待ちます。
←進行方向
EL
電源
7号車
6号車
5号車
4号車
3号車
2号車
1号車
← ソウル
8217
99339
11557
12247
12513
84
10127
12014
12276
栄州
食堂
車椅子
機関区
対応
H1217列車京義線経由 速 度 種 別 ホンガッ/8100 (混甲:平均速度45)水色(15:35) → ソウル(15:50)
H1217列車は回送列車として水色を15時35分に出発、15時50分にソウル駅に到着します。その後16時5分にソウル発釜山行き無窮花1217列車として出発。我々が添乗する天安には17時13分、その後大田、東大邱と南下を続け、およそ5時間40分後の21時44分、終点の釜山に到着です。
この日は混雑もあり、予定より早めに出庫指令が出ました。15時22分、定刻より22分早発で水色車両基地を出発します。
列車は水色の構内を抜け、出庫線を加速して行きます。
列車は加佐駅を通過。京義線に合流します。(1〜2番) 加佐駅の場内信号を通過。速度計下にも信号に同期して黄色のYランプが点灯します。(8番) フルノッチで加速。床下からのモーターの響きと共に4つのモーターのパワーゲージがどんどん伸びて行きます。
約70Km/hで蛇行運転。列車は快調に走ります。
側窓から後方を眺めると、客車が連なっている様子が見えます。ステップ付きのディーゼル機関車より後方確認は厳しいのは箱型の宿命です。
列車は新村駅(4番)を通過します
絶縁区間に入るとチャイムと音声でアナウンスがあります。機関士さんは確認ボタンを押し、絶縁区間を通過します。(3,4番) 絶縁区間があるのは京義線が鮮鉄時代、阿[山見]駅があった辺りです。現在"阿[山見](アヒョン)駅"と言えばここから数100メートル離れたメトロ2号線の駅となり、京義線の駅ではありませんが、2本の線路の間には今も当時の島式ホームの遺構が残っています。(7番) H1217列車はソウル駅1番線に入線します(8番) 8217号が回生ブレーキ中です。
8217号率いるH1217列車は西小門踏切を通過。窓を開けると夏のような陽気が漂ってきます。
列車はソウル駅構内に進入します。(1〜3番) 機関士さんが橋の下で線路内を歩いている旅行者を発見。汽笛を鳴らして注意を促します。ソウル駅を出発したセマウル号の回送列車も汽笛を鳴らして非常停車。H1217機関士 「ソウル駅〜ソウル駅〜H1217列車どうぞ」ソウル駅 「こちらソウル駅。H1217列車どうしました?」H1217機関士 「ソウル駅北方の橋の下で民間人が線路を歩いています。非常に危険ですので警備員を派遣してください。対向列車も急停車しました。早くお願いします」D1112(2番のセマウル号)機関士 「言葉が通じないのでどうやら外国人のようです」ソウル駅 「すぐ警備員を派遣します」無断で線路や構内に入るのは論外ですが、沿線で列車撮影をする事も多い我々鉄道ファンも撮影時、線路に近付きすぎないように注意しなければと気持ちを引き締めつつ…(7〜9番) H1217列車は無事にソウル駅1番ホームに到着!
定刻より15分ほど早くソウル駅に到着。ここから乗客を乗せて、いよいよ京釜線の旅が始まります☆
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