「台湾」宜蘭線三貂嶺駅にイソウロウ


台北郊外の渓谷に佇む、のどかで多忙な分岐駅


↑渓谷のせせらぎ音を掻き分けて平渓線のローカル列車がやって来ました。
 

谷間の夕涼み、夕方の三貂嶺駅にイソウロウする

 

台北郊外に位置する三貂嶺駅。ここは大人気のローカル線、平渓線の分岐する小さな駅です。

基隆河の渓谷の中に佇む対向式ホームの駅には線路の香りと木々の香りが漂う天然のリラクゼーション施設のようです(*^^*)

(右下)ホームから花蓮側を望みます。複線電化の宜蘭線は左に折れ、牡丹坡(峠)の上り坂が始まります。
単線の支線、平渓線は右に分岐します。

(左下)今も残る號誌楼。日本的には信号詰所に当たる建物です。現在は使われていませんが、宜蘭線の自動化前はここで信号操作をしていました。
 

ここが駅前広場!

 

駅を降りると駅前はご覧の通り。左側はすぐに渓谷の崖となります^^;

駅前は商店も無く、岸にへばりつくように古い民家が数軒のみ。道路では訪問困難なまさに“秘境駅”の風貌です。
 

三貂嶺駅、駅前の風景

 

現在の三貂嶺駅は近所の住民の足の他に、休日になると三貂嶺の古道を散策するハイキング客の利用があります。

最近はこの駅の持つ独特の風景も人気が高く、台湾の旅行雑誌やテレビでもたびたび紹介されています。
 

それでは、駅イソウロウ開始です〜!

 

8月の台湾、日中は雨が降りながらも非常に蒸し暑い日が続いていました。が、夕方の三貂嶺はだいぶ涼しくなり時折爽やかな風が吹きます。

日曜の夕方とあって、誰も居ない静まり返った待合室。カメラが入ると駅員さんが明かりを灯けてくれました。

(右上) 「請 確認 列車後端標誌」の張り紙。通過列車を見守る駅員さんにテールランプの点灯確認を促します。

 


事務所にもイソウロウ☆

 

駅周囲を散策した後、撮影許可を得て、早速事務所にイソウロウします。


信号所が駅になったような小さな駅と思いがちですが、事務所を見ると立派に“駅”を感じます☆
 


ハイテクとローテク

 

事務所には台湾でおなじみのCTC直結のパネルや運行状況のオンラインコンピューターがあります。そしてその中に赤い通票閉塞機。

平渓線の三貂嶺〜十分は今もタブレット閉塞が活きており、閉塞区間の起点であるここ三貂嶺駅にも閉塞機が現役で活躍します。

 


三貂嶺から分岐する平渓線。ここを走る列車は大きな街である瑞芳や八堵が始発駅となっています。三貂嶺駅は利用者にとっては乗換駅の機能はあまりありませんが、運転上では大変重要な役割を果たします。


(参考)
イソウロウ時間のダイヤ

またまた懲りずにダイヤを国鉄時刻表風に^^;
列車種別”特急”やL特急マークは台湾にはありませんが御愛嬌で^^;;;



今回三貂嶺駅には瑞芳17時42分の區間3235次にてやって来ました。ここで取材と撮影を行い三貂嶺19時1分発の區間3236次で瑞芳に戻ります。

2007年5月のタロコ号運転開始と共にさらに特急街道に磨きを掛けている宜蘭線。電車、気動車、プッシュプルと多彩な車種で頻繁に特急が行き交います。





わずか1時間少々の滞在と言えど、自ら利用する列車を含めて時刻表上だけでも13本もの列車が撮影できます☆

早速列車が!

  

列車接近の警報音と共に無線交信が始まります。


1057D「三貂嶺駅、こちら1057D」

三貂嶺「三貂嶺1057D通過どうぞ」

721レ「三貂嶺駅、721列車接近どうぞ」

1057D「1057D三貂嶺通過」

三貂嶺「三貂嶺721列車通過どうぞ」

721レ「三貂嶺駅、721列車通過」

※日本風に訳しています
 

さぁ、列車がやって来ます。
 

18時1分、ドラマの幕開け!

 

花蓮側からは貨物列車の712次(1番)が、台北側からは台東へ向かう自強号1057次(2番)が同時にやって来ました。重厚な貨物列車と軽快な特急気動車が山間の駅で離合します。北迴線沿線はセメントの産地。多くの貨物列車が西部の大都市へセメントを運び、台湾の発展を支えます。
 
(9番) 今日の712次には後部補機が付いています。
 

力強く山を降りる

 

前後の機関車が阿吽の呼吸で険しい坂を下ります。

宜蘭線のこの区間は「牡丹坡」と呼ばれる山越え区間。重量のあるセメント列車には後部に補機を連結し、山を越えます。

新型車両の投入で高速化した特急の合間を縫って険しい坂を越える仕業は大変難易度が高いです。
この日は日曜の夕方とあって、712次はこれからますます混雑するダイヤを避けるように予定より1時間以上も早めに通過します。
 

通勤電車でローカル電車、區間車2715次

 

双方向のダイナミックな通過劇から数分、今度は蘇澳に向かう普通列車がやって来ました。少々遅れていた自強1056次とホームですれ違います。

(8、9番) 節電の為に列車通過後は信号を消灯します

チ〜ン!

 



蘇澳に向かう電車を見送った頃、閉塞機のベルが鳴ります。

平渓線の列車が十分駅を出発。閉塞を行います。休日の夕方、平渓線も遅れているようです。


閉塞完了と共に十分からは區間3226次がやって来ます。
 

18時16分、區間2038次到着

 

自強号1056次の遅れで退避駅を変更した2038次は15分ほど遅れて到着します。かつては客車王国の東部幹線を一変させた通勤電車も今ではすっかり地域の足として定着しています

 

超過密区間!

 

のどかに列車を見送って事務所に戻りビックリ!気が付けば超過密区間になっています。
 

<解説>

 

2715次と2738次を送った三貂嶺駅。これから平渓線の上下列車3225次・3226次を迎えます。宜蘭線にはプッシュプル自強号1041次とタロコ号こと自強1069次が迫っています。
 

18時24分、自強1041次通過&平渓線3225次到着

 

事務室で接近音が鳴り出してまずやって来たのは花蓮からの自強号1041次。はるばる高雄を目指すプッシュプルのE1000系は満員の乗客を乗せてダイナミックに駆け抜けます。そして入れ替わりに平渓線に入る3225次が到着。タブレットを携えて三貂嶺に向かっている対向列車の3226次を待ちます。

 

3226次を待つ

 

定時であれば3226次は5分ほど前に到着しているのですが、人気観光スポットを数多く擁する平渓線。この日は夏休みの日曜とあって遅れ気味。降りてきた運転士さんも「今日は人がすごかったからね〜昼間の遅れを引きずって大変さ〜」と混雑する休日の苦労を話します。

 

タロコが迫る

 



3226次は5分ほど遅れている模様。進路パネルでは3225次後続のタロコ号1069次が前の駅を出発。我々の駅に向かって来ます。

タロコ号は台湾鐵路管理局の誇る看板列車。台北〜花蓮を約2時間という驚異的な速度で走るこの列車は優等列車の中でも別格!
 

18時27分、3226次到着

 

山間に汽笛をこだまさせて待ちに待った3226次がやって来ました。2人の駅員さんが連係プレーで列車から通票を受け取り、素早く閉塞を行います。

(5〜8番) とにかく時間が無い!タブレットをパスします

 

<解説>

 

3226次から十分〜三貂嶺のタブレットを受け、十分駅と閉塞手続きをします。手続き完了後、タブレットを3225次に渡して出発させます。

現在三貂嶺駅に向かって走行中の後続列車である自強1069次「タロコ号」は3225次が出発しないと三貂嶺駅に進入できません。そのため、三貂嶺駅にはいち早い閉塞手続きが求められます。
 

急げ!急げ!

 


「三貂嶺駅でタロコ号を遅らせるわけにはいかない」

駅員さんは大急ぎで事務室へと向かいます。
 

3225次の閉塞開始

 

3225次運転の閉塞を開ける為、十分駅と通信。素早く閉塞手続きを行います。


素早い閉塞手続き

 



タロコ接近は十分駅にも伝わっており、すぐに十分駅から返答がありました。三貂嶺、十分の両駅が力をあわせて閉塞完了!

18時28分、3226次・3225次を送り出す。

 

わずか1分足らずで両列車を送り出します。急ぎながらも作業は正確。列車は安全に出発します。

3225次、平渓線へ

 

ハラハラドキドキで長く感じた3分間の停車の後、無事にタブレットを携えて3225次は平渓線へと踏み出しました(*^^*)

最後のポイントを通過した瞬間、事務所から3225次が無事発車した旨が宜蘭線管制に伝えられました。


プライドを賭けた通過劇

 

まさにタロコ号が場内信号に接近しようとした矢先、間一髪でタロコ通過の為の閉塞が開きます。直後にタロコ号がやって来ました。

台鉄の一員として看板列車「タロコ号」を安全・迅速に送り出そうと尽力した三貂嶺駅の駅員さん。スーパー特急が名も無き小駅で何事も無く定時通過する裏側には駅員さんのプライドを賭けたドラマがありました☆
 

タロコ号を見送る

 

山間に甲高いIGBTのインバーター音を響かせてタロコ号は通過して行きます。
 

 



過ぎ行くタロコ号。新幹線のようなまぶしいテールランプを煌めかせながら山間のトンネルに吸い込まれて行きました。


大仕事を終えて

 



大仕事を終えた頃、ふと気が付くと周囲はすっかり暗くなっていました。
 

<解説>

 

3225次は十分へ、1069次は花蓮へ。それぞれ無事に目的地を目指します。

隣の候[石同]駅では先ほどの貨物712次の後部補機が切り離されます。
 

単機回送の補機が帰る

 

候[石同]駅まで712次の後部補機を務めた電気機関車E339。再び単機で峠を越え雙渓駅に戻り、次の貨物の補機として待機します。
 

駅の業務はまだまだ続く

 

多忙な宜蘭線は続々と列車がやって来ます。駅員さんは1つ1つの列車を確実に送り出します。

(左上) 十分からの連絡を受けて3236次の閉塞を開け、迎え入れの準備をします。

 

19時00分、3236次到着。お世話になりました〜m(__)m

 

いよいよ帰りの列車、平渓線からの3236次がやって来ました。十分からのタブレットを受け取った駅員さんにお礼を言って列車に乗ります。駅員さん、ありがとう〜!
 


宜蘭線三貂嶺駅を後にする


台北から區間車でおよそ1時間、大都市近郊とは思えない爽やかな渓谷に佇む小さな駅、三貂嶺。秘境駅の様相を呈しながらも多忙な運転業務。車両は変わり、信号も新しくなれど、鉄道員の誇りの活きる渓谷の駅は今日も特急街道を支えている事を感じつつ、三貂嶺駅を後にした…

イソウロウ日時
2007年8月


  トップページへ
HOME