「台湾」台東機務分段にイソウロウ


台湾東部、ディーゼルの聖地を支える車両基地


↑研修庫の脇を塗装も一新した観光列車「温泉公主號」が通過します
 

台湾東部の鉄道の拠点、台東站

 

花東線の南の始発駅でもある台東は台湾東南部の主要都市です。ここは温泉や観光地も多く、また多くの原住民の方々が生活している事でも知られています。そんな台東市の中心駅、台東駅は台北・花蓮を目指す花東線と、高雄を目指す南迴線を走る列車が数多く設定されています。

台湾鐵路局の優等列車である自強号・観光列車・呂
(*)光号から地域の足、普通車まで様々な列車が発着する台東駅、そんな台東駅に出入りする列車の安全と快適を守るのが駅に隣接する車両基地、台東機務分段です。

今回は関係各所の御好意により台東機務分段にイソウロウ出来ることになりましたv(^^)
非電化路線の車両を支える縁の下の日常を体感しま〜す☆
 

早速正門へ!

 


この日は台湾全土が雨雲に覆われ、雨の降りしきる一日でした。台東駅に降り立つと雨は勢いを増し、所々に大きな水溜りの出来た道を台東機務分段に向けて歩きます。

駅の喧騒から少し離れた場所に台東機務分段の正門がありました。

「取材の日本人だね。聞いてるよ。はい旅券出して。ありゃ、雨の中歩いて来たのかい!?^^;;」

守衛さんはよく喋りながら事務室へと案内してくれました☆

台東機務分段の庁舎

 



事務室の有る庁舎へ向かいます。庁舎正面にはいきなり腕木信号機が保存してありビックリ!花東線で数年前まで使われた腕木信号機。鐵路の安全を守り続けたその功績をいつまでも忘れ無いよう、今もこの地で列車と乗務員の安全を見守っています。
 

運轉股訪問

 

雨が強いので運轉股(運転区)で雨宿りさせて頂きました〜☆

台東機務分段の庁舎は車両整備の部署と共に列車乗務の拠点でもあります。

庁舎内の運轉股では多くの運転士さん・車掌さんが
上班報到(出発前の点呼)を待っていました。

 


運轉股の風景

 


台東機務分段には、台東の他に花蓮や高雄に所属している乗務員さんの折り返し、休息の場でもあります。

(右上) ロッカールームの入口には「快楽出門」「平安回家」と書かれた門があります。「楽しく出掛けて、無事に帰る」安全運転への願いの託されたスローガンに出発を控えた乗務員さんも気を引き締めていました。

(左上) カウンター上に置かれた回転式の乗務表。帰着した乗務員さんが次の乗務を確認します。


いよいよ構内へ☆

 

雨が少し弱まったのでいよいよ構内にイソウロウです。

機務段で貸して頂いたヘルメットと黄色い雨合羽で外の雨をしのぎながら研修庫へ向かいます☆

車両基地の風景

 
台東機務分段に集う車両は自強号のDR2800〜3100の各形式と花東線ローカル用のDR2700の柴聯車(気動車)群、そして呂(*)光号客車や藍色客車、定期客車列車の他に観光列車や貨物の牽引も担当する柴電機車(ディーゼル機関車)と様々な非電化車両が集います。

 

早速列車が!

  

車両研修庫に放送が鳴ると、整備スタッフが持ち場について列車を待ちます。
 

列車の戻りを待つ

 



この日は雨の降りしきる一日、これから入庫して来る自強号2053次も予定入庫時刻より少し遅れているようです。
 

2053次、DR3100・9連入線

 

屏東線の雨の影響で高雄からの2053次は20分ほど遅れてやって来ました。屏東線の林邊渓橋がこの列車の通過した直後、増水で不通となり、まさにギリギリのタイミングでここ台東に無事到着をしました。

ドアが開くと乗り込む清掃スタッフと点検をする整備スタッフ、給油スタッフに分かれてテキパキと作業開始です。

 

DR3100@給油中

 

給油スタッフにより燃料の給油が行われます。
9両ある特急気動車。限られた時間内で1両1両手早く確実に給油を行ってゆきます。

柴聯車、加油〜☆

 



給油係さんはサクサク給油を行い、あっという間に9両が給油されて行きます。

DR3100運転整備中

 

DR3100は折り返し運用である自強2056次までの時間、清掃と給油、整備を行い、出庫線にて出発待機します。

 

1079次も入線


2053次入線の10数分後、今度は知本から回送されて来た1079次が到着しました。コチラもDR3000の9連。スタッフはテキパキと作業を開始します。

始発駅、台東で列車に乗ると車内が綺麗なのは当たり前。この「当たり前」は多くのスタッフにより、ここ台東機務分段で守られています☆
 

特急気動車の並び

 

研修庫で顔を合わせたDR3100とDR3000。2つの特急気動車はしばしの出会いの後、再び台北、高雄へとそれぞれの目的地へと足を向けます。


 

DR2700のネグラ

 

台東機務分段はDR2700の運転拠点でもあります。今ではローカル気動車になった車両ですが、今も台東を中心に花東線の庶民の足として活躍を続けています。

それではDR2700のピットにLet's go☆

 

研修庫の内部

 


研修庫は様々な部品や資材が置かれていました。

走り疲れたDR2700はここで再び活力を取り戻し、また再び沿線利用者の大切な足として活躍の日々を送ります。
 

DR2700のトップナンバー

 

研修庫内にDR2700のトップナンバー、DR2701号を発見!1067mm軌の世界最速を誇ったディーゼル特急の歴史はこの1両から始まりました(^_^)

 

研修庫のディテール

 

この日は7両のDR2700が研修中でした。台湾東南部の車庫の中に多数の黄色い東急顔(?)が憩います。

(右上) 貫通扉と窓枠が置いてありました。
「電線検修車」として台北方面で活躍中のCM79,80からの発生品とか。
(下中) DR2700の屋根上を。エアコンにも見える大きな装置はラジエーター。ほぼ同期の日本の特急気動車、キハ181系が屋根上に自然放熱式のラジエーターを装備したのに対し、DR2700は強制廃熱式。厳しい南国を高速で走るために、当時の最新装置を付けた事が伺えます。

 

整備作業は続く

 

天井をたたく雨音の下、整備作業が続きます。

(左上) 整備を終えたDR3100は出庫線に移動。高雄行き2056次として運行されるべく出庫線へ移動して行き、DR3000のみが引き続き整備を受けます。


出庫線へ

 


整備庫の取材を終えて外に出ます。屋外の出庫線には普通564次として夕方に出動するDR2700が休んでいました。

出庫線の風景。

 

出庫線では給油と清掃・整備を終えた列車が出番を待って待機します。これから乗客を乗せる列車たちは気合も充分に出番を待っているかのようです(*^^*)

(右下) 先ほどのDR3100も待機中。この日は高雄に向かう屏東線の林邊渓橋が増水で不通状態。運休もしくは手前の枋寮駅で運転打ち切りの指示を持ちながら、いつでも出動できるよう待機します。

古豪気動車に合おう♪

 

機務段イソウロウのラストは非電化を支えた古豪気動車を訪ねます。

台東機務分段はかつて活躍した気動車たちが人知れず保存されています。

トップバッターはDR2050号こと「ドラえもん(小叮[口當])」です。

「ドラえもん」とは青と白の小柄なその車体と、ナロー時代は黄色い顔だった過去(漫画のドラえもんもネズミに耳を齧損される前は黄色だった)と言う由来で台湾の鉄道ファンからこの愛称を貰ったとの事です。

DR2050のディテール

 

台東機務分段にはDR2060,DR2067,DR2069の3両が保管中です

DR2050は気動車DR2000の付随車として、ナロー時代の台東線・LTPB1900を1067mm軌に改軌したものです。現役時代は動力を持つDR2000に牽引されて花東線で運用した他、S200やR20のディーゼル機関車に牽引され、台湾の鉄道ファンの中では伝説となっている南迴線のローカル列車としても運用されました☆

現在も状態の良い数両は西部幹線をネグラにSL列車の客車としても活躍します。
 

支線で活躍した銘気動車たち

 

DR2050の次は台湾のローカル線を魅せた銘車両を紹介します。台東機務分段ではDR2100〜2400の各形式が1両づつ保存されています。


それにしてもDR2050を見た後だと車体が大きく感じます^^;

DR2100

 


まずはDR2100系2102号を。この車両はもともと流線型のガゾリン動車GA2100(日本車輌製/1930年)のエンジンをディーゼル化(CumminsNHHB-600/200HP)し、車体も載せ替えた車両です。トップナンバーはいわゆる「バス窓」でしたが、2102号は藍色客車同様の窓となっています。

藍色気動車としてかつて日本でもテレビCMなどに出たこの車両はDRC1000が投入される1999年まで活躍を続けました。

(左下) DR2102の車内は清掃道具の倉庫となっていますが、椅子や運転席はそのまま残っています。

DR2200

 

次はDR2200系2203号を。DR2100との違いはタネ車が川崎重工製(1930年)のGA2200であることです。1973年に載せ替えたキハ20似の顔の車体は台湾の唐榮台北機械廠にて製作されました。
 

DR2300

 

次はDR2300を。タネ車はGA2100,2200の中型に対し、大型ガゾリンカーと呼ばれたGA2300(日車/1930年)ですが、車体はDR2100,2200とほぼ同じものが乗せられているそうです。

(左上) トイレの入口表示。「あき」は「無人」で表示するところが台湾風です☆
 

DR2400

 

最後はDR2400。タネ車は川崎製大型ガソリンカーGA2400です。

味のある風貌の藍色気動車は平渓・内湾・集集の3台支線の他に、MRTとなった淡水線・新北投支線、2007年に一部区間の貨物輸送を終えながらも、復活の話も浮上する深澳線、今も廃線跡の残る東港線などの今は無きローカル線でも活躍していました。

 

そしてトリはあの珍車☆

 

藍色気動車の隣にはひたすら異彩を放つ銀色の車体。どこかで見たことあるようなあの顔です^^;

超レアな"KISAHA"。DR2750

 

トリを飾るのはDR2700系の付随車。DR2750系DR2752です。まだDR2700系が光華號として運転されていた頃、付随車であるこの車輌が組み込まれていました。
 

珍車DR2750のディテール

 

DR2750はDR2700の車体はそのままに、トイレと運転室が無いタイプの車輌です。運転台つき動力車のDR2700と車体を共用したらしく、車内中央の月洞門や妻面の運転室の窓がそのまま残っています。運用を外れてもよくぞ保存していたと台鉄への敬意と感謝の念が付きません(*^^*)
 


台東機務分段を後にする


台東地区の運転拠点として特急から鈍行まで多彩な列車を預かる台東機務分段。1990年代初頭に(旧)台東から移転して来たまだまだ新しい車輌基地ですが、その敷地内にはしっかりと台鉄気動車の歴史が刻まれていました。

花蓮電化、タロコ号投入、EMU700運転開始、そして花東線の電化計画と日に日に電車時代が進む台湾東部の鉄道シーン。ナロー時代から台湾東部の発展を支えた気動車を新も旧も大切に守っている姿に、ここが花蓮に代わる気動車の聖地となることを感じつつ、小雨になった機務段を後にした…

イソウロウ日時
2007年8月


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